雪道を走ったあとの金属パーツ|融雪剤とアルミ・チタンの付き合い方

年末年始にスキー場へ二泊で出かけて、帰りは夜の高速をひたすら走りました。路面は所々白く乾いていて、前を走るトラックが巻き上げる細かい粉が、ヘッドライトの光の中で舞っていました。家に着いたのは深夜。翌日も仕事があったので、車はそのまま駐車場に置いて寝ました。
異変に気づいたのは、その週の週末です。天気がよかったので久しぶりに車を眺めたら、ナンバープレートを留めているボルトの頭が、白っぽくざらついている。指で拭うと粉のようなものが取れて、その下の金属が少しくすんでいました。ドアの下端にも、ホイールの内側にも、同じような白い曇りが残っています。洗車機に一度入れたはずなのに、そこだけ落ちていない。塩は、落ちにくい場所に残る——それが、この記事の出発点です。
この記事では、雪道を走ったあとに金属の部品で何が起きているのかを、材料の側から説明します。融雪剤が残りやすい場所、アルミの表面を守っている膜の正体、その膜が壊れたときに起きること、チタンが選ばれる理由、異なる金属が触れている場所の注意点、そして帰宅後にやるべき手入れの順番です。最後に、車内側——靴で運び込まれる塩分の話もします。
融雪剤が残る場所は、だいたい決まっている
まず、相手を知るところから。冬の道路にまかれる融雪剤は、塩化物系の薬剤が主に使われます。塩が水に溶けると凍る温度が下がるので、路面が凍りにくくなる。仕組みとしてはそれだけです。ありがたい薬なのですが、車から見ると塩水を高速でぶつけられているのと変わりません。
そして塩水は、当たった場所すべてに等しく残るわけではありません。残るのは、水が流れ落ちにくい場所と、乾きにくい場所です。具体的にはこのあたりです。
| 残りやすい場所 | なぜ残るか | 洗車機で落ちるか |
|---|---|---|
| ナンバープレートの裏とボルトの頭 | プレートと車体の隙間に入り込み、水が抜けない | 落ちにくい。ブラシも水も届かない |
| 下回り、サスペンションまわり | 直接跳ね上げを受け、乾く前に次が来る | 下部洗浄の付いた機械でないと届かない |
| ドアの下端、サイドステップ | タイヤが巻き上げた水がそのまま当たる | 表面は落ちるが、折り返しの内側は残る |
| ホイールの内側、ブレーキまわり | 形が複雑で、水が溜まる場所が多い | 外側だけ落ちて内側が残ることが多い |
この表でいちばん言いたいのは、目に見える面はだいたい落ちているということです。冒頭で白い曇りが残っていたのは、洗車機のブラシと水が届かない、隙間の側でした。手入れの話をするときは、まずこの「届いていない場所」を頭に置いておいてください。
アルミを守っているのは、目に見えない膜
次に、材料の側の話をします。アルミという金属は、実はとても酸化しやすい金属です。空気に触れた瞬間に表面が酸化して、ごく薄い酸化アルミニウムの膜ができます。ところがこの膜が緻密で、下の金属をきっちり覆う。だから内部まで酸化が進まない。アルミが錆びにくいのは、錆びにくいからではなく、最初にできた薄い錆が蓋になっているからです。この自然にできる膜を、不動態皮膜と呼びます。
人工的にこの膜を厚く、均一に作り直す処理がアルマイト——専門的には陽極酸化処理です。当店のA06 チタンボルト ブルーやA07 チタンボルト シルバー(各¥1,500)に施されているアノダイック電解被膜も、同じ系統の考え方です。装飾のためだけの処理に見えて、実際には保護の役割を持っています。膜の厚みで色が変わるという話や、その色がどう経年するかはアルミの色は褪せる?にまとめました。
さて、問題はここからです。塩化物イオンは、この不動態皮膜を局所的に壊すのが得意です。全面が均一に溶けていくのではなく、膜の弱いところ——傷、角、隙間の奥——に穴が開くように攻撃が集中します。開いた穴の中は水が動かないので、外に比べて条件が悪くなり、そこだけ進行が速くなる。これが、白い粉が点々と出る腐食の姿です。
ですから、腐食の話は「アルミが弱い」という話ではありません。膜が壊れる場所の話です。設計する側が表面処理を選ぶとき、頭の中にあるのはまさにこれで、どこに傷が付くか、どこに水が溜まるか、どこが乾かないかを先に並べてから処理を決めます。
チタンが選ばれるのは、膜を自分で作り直すから
チタンにも、同じように表面の酸化膜があります。違うのは膜の性質です。チタンの酸化膜は非常に安定していて、しかも傷ついても、酸素があればその場で作り直される。塩化物を含む環境でも比較的おとなしくしていられるのは、この再生の速さによるところが大きいと言われています。
ただし、「チタンは絶対に錆びない」とまでは書けません。材料の話は条件で変わりますし、当店の商品説明も「耐腐食性が向上しています」という表現に留めています。正確に言うなら、車の外装に使う一般的な環境では、鉄のボルトより明らかに有利というくらいの理解が実務的です。ナンバープレートのボルトを錆びさせない話はナンバープレートのボルトが錆びる理由のほうで、電食も含めて詳しく扱っています。
異なる金属が触れている場所ほど、気をつける
ここで、冬に効いてくるもう一つの話をします。種類の違う金属が接触していて、そこに水——特に塩水——が渡ると、電池のような状態が生まれます。二つの金属のあいだにわずかな電位の差があり、水が電気を通す道になるからです。この状態では、電位の低いほうの金属が優先的に溶けていきます。異種金属接触腐食、いわゆる電食と呼ばれる現象です。
車のナンバープレートまわりは、この条件が揃いやすい場所です。プレートの素材、ボルト、その下のブラケットや車体。素材が違うものが重なって、隙間があって、そこに塩水が入って抜けない。冬に真っ先に傷むのがこの部分なのは、偶然ではありません。対策の考え方は三つあります。
- 水を残さない。 電気が流れる道をなくすのが、いちばん確実です。乾いていれば反応は進みません
- 金属同士を直接触れさせない。 ワッシャーや樹脂の座を挟んで、電気的に切る。当店のチタンボルトにワッシャーが付属しているのも、締結の座面を安定させると同時にこうした意味を持ちます
- 絶縁できないなら、腐食しにくい材料を選ぶ。 チタンを使うのは、この三つめの考え方です
ボルトを交換するときは、締めすぎに注意してください。ナンバープレートの取り付けはそれほど大きな力を必要としません。強く締めればプレート側やブラケット側を痛めますし、塗装やめっきに傷を入れれば、そこが次の起点になります。膜を壊さないという発想は、締めるときにも当てはまります。
いちばん効く手入れは、帰ってすぐの水
ここまでの話をまとめると、やるべきことは一つに絞られます。塩を、乾く前に流す。薬剤も道具も要りません。効果の大きさで言えば、帰宅直後の水洗いに勝るものはないと思っています。
順番の考え方だけ書いておきます。
- できれば当日、遅くとも数日以内に。 塩は乾いても消えず、次に湿気を吸ったときにまた働き始めます。放置した日数がそのまま条件の悪さになります
- 下回りから。 上から洗うと、落とした汚れが下に流れます。下部洗浄の機能がある洗車機を使うか、手洗いなら下向きにホースを入れて流します
- 隙間に水を通す。 ナンバープレートの裏、ドアの下端、ホイールの内側。表面をこするより、水を通して塩を薄めることのほうが大事です
- 最後に水気を切る。 洗ったのに隙間に水が残ると、かえって乾かない時間が延びます。拭ける場所は拭く、可能なら少し走って風を当てる
手が冷たい季節の作業なので、グローブがあると続けやすくなります。当店のチタンボルトのような小さな部品を扱うときは特に、指先が利くほうが安全です。細かい部品を落とさずに済みますし、金属の角で手を切ることもありません。
車内側——靴が運び込む塩分と、フットプレート
忘れられがちなのが車内です。雪の駐車場を歩いた靴には、雪と一緒に融雪剤が付いています。それが運転席の足元に落ちて、溶けて、マットに染み込む。車内は乾きにくいので、外装より条件が悪いことすらあります。締め切った車内で水分が抜けず、金属部品の表面でゆっくり働き続けるからです。
足元にアルミのプレートを入れている場合は、冬のあいだだけ点検の頻度を上げてください。当店のA03 アルミ フットプレート(¥4,800)は280mm×160mm、厚み2mmの高強度アルミニウム製で、滑り止めの機能を持たせた面があります。この滑り止めの凹凸は足を止めるための形ですが、同時に水と汚れが残りやすい形でもあります。冬は凹みの底に融雪剤が溜まりやすい、と考えておくのが安全です。
やることは外装と同じで、水分と塩を残さないことです。マットを外して干す、プレートの表面を固く絞った布で拭く、可能なら乾いた布でもう一度拭く。晴れた日に一度、ドアを開けて風を通すだけでもかなり違います。小物のラインアップはその他アクセサリーのコレクションにまとめています。
なお、アルミやチタンの表面に白い曇りが出てしまったあとの処置ですが、研磨剤入りのケミカルで強く磨くのはおすすめしません。曇りは取れても、膜そのものを削ってしまう可能性があるからです。膜は保護のためにあるので、削れば次はもっと早く同じことが起きます。中性洗剤で洗って水気を切る。それで残るくすみは、材料の履歴として受け入れるほうが、結果的に長く使えます。
洗えない日を、どう乗り切るか
ここまで「帰ったら洗う」と繰り返し書いてきましたが、現実にはそれができない日のほうが多いはずです。深夜に着いた、翌日も仕事だった、そもそも氷点下で水が凍る。冬の手入れが続かないのは、意志が弱いからではなく条件が厳しいからです。ですから、洗えない前提でも効く工夫を用意しておきます。
まず、優先順位を一か所だけ決めておくこと。全部やろうとすると一つもやらずに終わります。時間が十五分しかないなら、下回りに水を通すことだけをやる。そこが最も塩を受け、最も乾かない場所だからです。ナンバープレートまわりは面積が小さいので、バケツの水を上から流すだけでも意味があります。完璧な一回より、雑な三回のほうが効きます。
次に、凍る日は無理に水を使わないこと。氷点下の屋外で洗えば、ドアの隙間やロック部分に入った水が凍ります。開かなくなる、ゴムを傷めるといった別の問題を作ってしまう。そういう日は、乾いた布で拭ける範囲を拭くだけにして、気温が上がる日を待ってください。手入れは、条件が整った日にまとめてやるほうが安全です。
それから、コイン洗車場やガソリンスタンドの下部洗浄を、遠出の帰り道に組み込んでしまう方法もあります。家に着いてからでは腰が上がりませんが、通り道なら寄れる。意志ではなく、経路で解決するという考え方です。前の章に書いた「帰宅直後がいちばん効く」という原則を、実行できる形に落とすと、だいたいここに行き着きます。
まとめ:冬の遠出のあとに確認すること
腐食は、材料が弱いから起きるのではありません。表面を守っている膜が、特定の場所で壊れるから起きます。だから手入れの発想も、「強い材料を買う」ではなく「膜が壊れる条件を作らない」に寄せると、やることがはっきりします。
- 融雪剤が残るのは、水が抜けない場所と乾かない場所。ナンバープレートの裏、下回り、ドアの下端、ホイールの内側を優先する
- 洗車機で落ちているのは見える面だけ。隙間には届いていないと考える
- アルミもチタンも、表面の薄い膜が本体を守っている。塩化物はその膜を局所的に壊す
- チタンは膜を作り直す性質が強く、外装のボルトでは有利。ただし「絶対に錆びない」とは考えない
- 種類の違う金属が触れて濡れる場所は要注意。水を残さない、直接触れさせない、材料で逃げるの三択
- いちばん効くのは帰宅後の水洗い。下回りから、隙間に水を通し、最後に水気を切る
- 車内も忘れない。靴が運び込んだ塩分は、乾かないぶん条件が悪い。マットとフットプレートを拭いて風を通す
- 洗えない日は、下回り一か所に絞る。氷点下の日は水を使わず、気温が上がる日に回す
- 白い曇りを研磨剤で削らない。膜を削れば、次はもっと早く同じことが起きる
冬に一回だけ遠出する、という方がいちばん危ないと思っています。毎日雪道を走る人は習慣として洗いますが、年に一度の人は、洗う前に日常へ戻ってしまう。帰った日の夜に十五分だけ、下回りに水を通す。それだけで、春に見る景色がかなり変わります。
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