追加メーターは何から付けるか|油温・油圧・水温、最初の1個の決め方

週末のイベントで、隣に停まっていた車のダッシュボードに三連メーターが並んでいました。カーボンのスタンドに、同じ顔の丸い計器が三つ。運転席から見上げる角度で、きれいに揃っている。その日の帰り道、自分の車のダッシュボードを見て、ここに何か足したい、と思ってしまった。
家に帰って商品ページを開き、そこで手が止まります。三つ買うとして、自分は何を測るのだろう。油温、油圧、水温、ブースト、電圧。並んだ名前を眺めても、どれが自分に要るのかが分からない。かといって全部というわけにもいかない。結局その日は何も買わず、ページを閉じて終わりました。
この記事では、その手前にある判断を扱います。どこに付けるか、配線をどう通すかの前に、そもそも何を測るのか。純正メーターが既に見せている情報を数えるところから始めて、自分の乗り方に対して意味のある計器の決め方、一個から始めて後から組み替えるという道筋までを整理します。
3連は格好いいが、3つとも見ているだろうか
最初に、身も蓋もないことを書きます。三つ並べたとして、走行中に三つとも見ることはまずありません。
これは意地悪な指摘ではなく、人間の見え方の話です。視線は一度にひとつの場所しか捉えられません。ダッシュボードに目を落とす動作は、前方から目を離す動作でもあります。その一瞬で読めるのは、基本的に一つの針です。二つ目を読むには、もう一度目を落とすことになります。
量産車のメーターを設計するときも、この制約が出発点になります。何を大きくするか、どれを中央に置くか、どれを警告灯に格下げするか。情報を増やすことより、情報を減らして順位をつけることのほうが、はるかに難しい仕事です。読ませたいものが三つあるとき、三つ並べるのは設計として最も安易な答えで、たいてい何も読まれなくなります。
ですから、追加メーターを考えるときの最初の問いはこうなります。「何を増やすか」ではなく「走行中に、前方から目を離してまで読む価値のある数字はどれか」。この問いに答えられれば、必要な数は自然に決まります。
純正メーターが既に見せている情報を、まず数える
次にやることは、買い足しの検討ではなく棚卸しです。いま自分の車が、既に何を見せてくれているのかを数えます。
純正のメーターパネルに何が並んでいるかは、車種によって大きく違います。ですから一般論ではなく、実際に自分の車の運転席に座って確認してください。見るのは次の三つです。
- 針や数字で見えている項目。 速度、回転、燃料、水温など。連続した変化が読めるもの
- 警告灯として用意されている項目。 点くか点かないかの二択で、途中の変化は分かりません
- メニュー画面の奥にある項目。 最近の車では、表示を切り替えれば油温などが見られることがあります
この棚卸しで、たいてい一つか二つは発見があります。「メニューの中に既にあった」という項目は、追加メーターの候補から外れます。逆に、警告灯しかない項目は候補の筆頭になります。警告灯は、決められた条件に達したときに点くものです。点いたときには、既にその状態になっているということでもあります。そこへ向かっている途中の変化は、警告灯では読めません。
もうひとつ、水温計について補足します。針の付いた水温計があるからといって、細かい変化が読めるとは限りません。車種によっては、ある範囲に入っているあいだは針が動かないように作られているものもあります。乗る人を不安にさせないための配慮ですが、変化を読みたい側にとっては情報が絞られていることになります。自分の車がどちらなのかは、暖機の途中で針の動き方を観察すると見当が付きます。
何を知りたいのかで、順番は変わる
棚卸しが済んだら、次は自分の乗り方です。同じ車でも、使い方が違えば見るべき数字は変わります。ここでは代表的な三つの計器を、どんな問いに答えてくれるものかという形で並べます。
| 計器 | 答えてくれる問い | 効いてくる場面 |
|---|---|---|
| 油温計 | エンジンオイルが、いまどのくらいの温度か | 連続周回、上り坂の連続、夏場の渋滞 |
| 油圧計 | オイルが、いまきちんと送られているか | 高回転を使う場面、油温が高いとき |
| 水温計 | 冷却水の温度が、想定の範囲に収まっているか | 渋滞、猛暑、冷却系に手を入れたあと |
この表の使い方は単純です。右端の列に、自分がよく置かれる場面があるかを見る。連続周回をしないのに油温計から入る必要はありませんし、逆に走行会に通うなら油温は最初の候補になります。
油温と水温は、別々に動く
「水温計があるから油温はいらない」と考えてしまいそうになりますが、この二つは別々の液体の、別々の温度です。冷却水はエンジンを冷やすために循環し、エンジンオイルは各部を潤しながら熱も運びます。役割が違えば、上がり方も下がり方も違います。
実際、水温は落ち着いているのに油温だけが上がり続ける、という状態は珍しくありません。連続して負荷をかけたときには、この差がはっきり出ます。ですから、水温計があることは油温を知らなくてよい理由にはなりません。逆もまた同じで、油温だけを見ていると冷却系の異変を見落とすことがあります。
とはいえ、だから両方付けましょうという話にはしません。自分の使い方でどちらが先に厳しくなるのかを考えて、厳しくなるほうから始める。それが順番の付け方です。
油温については、上がってしまってから何ができるかという問題もあります。数字が見えるようになった結果、オイルクーラーの検討へ進む方は多い。ただし冷却系に手を入れる前に確認したいことがいくつかありますので、油温が上がってタレるもあわせてご覧ください。測ることと、対策することは別の判断です。順番としては、測ってからのほうが確実に無駄が減ります。
街乗り中心なら、増やす前に置き場所を決める
ここで、街乗りが中心という方に向けて正直なことを書きます。数字を読む機会は、思っているより少ないかもしれません。
信号と交差点の多い道では、視線はほとんど外に向いています。メーターへ目を落とす余裕がある場面は限られますし、そもそも街乗りの範囲で油温が問題になる場面は多くありません。それでも追加メーターを付けたい理由があるとすれば、それは「異常が起きたときに気づける」ことと、「コックピットの見え方が変わる」ことの二つでしょう。
どちらも十分な理由だと思います。むしろ後者を正直に認めたほうが、選び方はすっきりします。格好いいから付けたい、というのは立派な動機です。私たちも、機能だけで部品を作っているわけではありません。問題になるのは、機能を理由に選んだつもりで、実際には見た目で選んでいるときです。判断の軸が二重になると、どちらも中途半端になります。
ただし後者が主な目的なら、判断の軸は測る項目ではなく置き場所と見え方に移ります。ダッシュボードのどこに、どの角度で立てるか。フロントガラスへの映り込みはどうか。この話は追加メーターはどこに置くべきかにまとめてありますので、置き場所から考えたい方はそちらを先に読んでいただくのが早道です。昼に決めた明るさが夜には強すぎることもあるので、夜、追加メーターだけが明るいと感じたときもあわせて見ておくと、位置決めを一度で終えられます。
当店のスタンドは、3mmのCNC加工されたドライカーボン製で、表面には紫外線に耐えるための特別なコーティングが施されています。ダッシュボードの上は、車の中でいちばん日射を受ける場所です。ここに置くものにとって、紫外線への備えは見た目以上に実用的な意味を持ちます。
1個で始めて、足りなければ2連に組み替える
結論として、私たちがおすすめしたい進め方はこれです。まず一個。それで足りなければ増やす。
理由は三つあります。
- 一個なら、必ず読みます。 選択の余地がないので、目を落とせばその数字が入ってきます。読む習慣が付きます
- 足りないかどうかは、使ってみないと分かりません。 一シーズン使えば、二個目が要るのか、それとも一個で十分だったのかがはっきりします
- 置き場所の練習になります。 一個で位置と角度を詰めておけば、増やすときの判断が早くなります
当店のラインアップは、この進め方に素直に対応できます。どれも53mmまたは60mmのアフターマーケットのメーターに対応しています。
| 品番・商品名 | 取り付けられる数 | 価格 |
|---|---|---|
| P07/P08 シングル メータースタンド(53mm/60mm) | 1個 | ¥4,800 |
| P09/P10 2連メータースタンド(53mm/60mm) | 2個 | ¥5,800 |
| P11/P12 3連メータースタンド(53mm/60mm) | 3個 | ¥6,800 |
サイズの選択には注意してください。53mmと60mmは別のサイズです。先にメーター本体を決め、その外径に合わせてスタンドを選ぶ順番になります。ここを取り違えると、届いてから気づくことになります。
スタンドは後から増やせる、という前提で選ぶ
一個から始めることの、もうひとつの利点を書きます。スタンドの価格差が小さいことです。
シングルとダブルの差は1,000円、ダブルとトリプルの差も1,000円。この幅であれば、「将来のために大きいほうを買っておく」という判断をしなくて済みます。三連スタンドを買って穴を一つ空けたまま一年過ごすより、シングルで一年使って、必要が出てから買い替えるほうが、結果として無駄が少ない。空いた穴は、ダッシュボードの上ではけっこう目立ちます。どこまでが買い直しで、どこからが流用できるのかはメーターは、あとから増やせるか|1連から3連へで部品ごとに分けて書いています。
ただし、増やすときに必ず発生する作業がひとつあります。配線です。計器が一つ増えれば、配線も一組増えます。電源、アース、そしてセンサーからの線。この経路をどう通すかで仕上がりの印象は大きく変わりますし、後から追加しやすい通し方というものもあります。詳しくは追加メーターの配線をどう通すかに書きました。
センサーの取り付けについても、ひとこと添えておきます。油温や油圧のセンサーは、エンジンのオイルが通る場所に割り込ませることになります。ここは締め付けや密閉の管理が必要な作業です。ご自身での作業に不安があれば、整備工場に相談してください。メーターとスタンドは自分で付けて、センサーだけはお願いする、という分け方も現実的です。パフォーマンス関連の部品はパフォーマンスのコレクションにまとめています。
まとめ:視線を割く価値がある数字を、一つ選ぶ
追加メーターは、情報を増やす部品ではありません。見るべき情報を一つ決めて、それを見えるようにする部品です。数を増やすほど、一つあたりの価値は下がっていきます。
- 運転席に座り、いま純正メーターが何を見せているかを数える
- メニュー画面の奥に既にある項目は、候補から外す
- 警告灯しかない項目は、候補の筆頭になる
- 暖機の途中で水温計の針を観察し、細かく動くタイプかどうかを見る
- 自分がよく置かれる場面から、答えてほしい問いを一つ選ぶ
- 見た目が主な目的なら、測る項目より置き場所と映り込みを先に決める
- メーター本体の外径(53mmか60mmか)を先に確定してから、スタンドを選ぶ
- まず一個で一シーズン使う。足りなければ、そのとき組み替える
- センサーの取り付けに不安があれば、その部分だけ整備工場へ
三連のダッシュボードは、確かに格好いい。ただそれは、三つとも読まれているときにいちばん格好いいのだと思います。一個から始めた人の二個目には、ちゃんと理由が付いています。
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