社外部品を付けたエンジンルームに、水をかけていいか|洗う前に養生する3か所

久しぶりにボンネットを開けたのは、オイル交換のついでに水量を見ようと思ったからでした。ところが目に入ったのは液面ではなく、全体の汚れ方のほうです。手前のほうには白っぽい粉が薄く積もり、奥のほうには黒い筋が何本か走っている。粉は乾いた埃で、筋のほうは滲んだオイルに埃が乗ったものでした。半年前に部品を入れ替えたときは、あんなにきれいだったのに。
ここで手が止まりました。ホースで水をかけていいのか、判断がつかなかったからです。純正のままなら、雨の日も走っているのだから多少の水は平気だろうと思える。でも、うちのエンジンルームには純正ではないものがいくつか載っています。むき出しのエアフィルター、あとから付けたタンク、そのために引き回した配線。「純正なら大丈夫」の根拠が、そのまま自分の車に当てはまるのかどうかが分からない。結局その日は、乾いた布で手前だけ拭いて閉じました。
この記事では、社外部品を付けた状態のエンジンルームをどう洗うかを整理します。洗車の是非を一般論で語ることはしません。社外部品を足すと、水の入口が一箇所ずつ増えていく——この構造の話から始めて、養生すべき3か所、水を当てる方向、洗ったあとの乾燥、そして「そもそも拭くだけで足りる」という結論まで順に書きます。作業は必ずエンジンが十分に冷えた状態で行ってください。
純正のエンジンルームは、水がかかる場所とかからない場所が分けてある
まず前提を揃えます。エンジンルームは、そもそもある程度の水を想定して作られています。雨の日に走れば、路面から跳ね上がった水は下から入ってきますし、ボンネットの隙間から落ちてくる分もあります。ここは設計の段階で織り込み済みです。
ただし、想定されている水と、洗車で当てる水は性質が違います。走行中の水は「下から、少量が、風で乾かされながら」入ってきます。洗車の水は「上から、大量に、しかも溜まった状態で残る」ことになります。同じ水でも、量と向きと滞在時間が全部違う。
私たちが量産の部品を設計するとき、水に対する手当ては場所ごとに変えています。水が入っては困る部分は、開口の向きを下向きにする、上からカバーで覆う、合わせ目に段差を付けて水が乗り越えないようにする、といった形で守ります。逆に、多少濡れても問題のない場所には、そこまでの手当てはしません。図面の上では、エンジンルームは一様な空間ではなく、守られている場所と、守らなくてよい場所が細かく分けられた面の集合なのです。
ここが今日の出発点です。純正のエンジンルームが水に耐えるのは、全体が防水だからではなく、入っては困る場所だけが個別に守られているからです。
社外部品を足すと、その前提が一箇所ずつ崩れる
では、社外部品を足すと何が起こるか。答えは単純で、守られていた場所の守りが、一箇所ずつ外れていきます。
いちばん分かりやすいのが吸気です。純正のエアクリーナーは、たいてい箱に収まっています。あの箱は濾すためだけの容れ物ではなく、水が直接かからない位置に吸気の入口を置くための構造でもあります。それをむき出しのフィルターに替えると、濾材そのものがエンジンルームの空間に露出します。性能上の狙いがあってそうしているわけですが、水に対する守りは確実に一段外れます。
タンク類も同じです。あとから追加したタンクには、キャップやブリーザーといった上を向いた開口があります。純正のタンクなら、その開口が水の落ちてくる位置に来ないよう配置まで含めて検討されていますが、汎用のタンクを自分で据えた場合、その配慮は自分でやることになります。
三つめが電気です。部品を足すということは、配線を分岐したり、センサーを追加したりするということでもあります。純正のカプラは水がかかる前提で作られているものが多い一方、あとから増やした接続部は、そこまでの処理がされていないことが少なくありません。ここは見た目に出ないぶん、忘れられがちな場所です。
部品を足す順番と、そのたびに増える取り回しの話はエンジンルームの部品を足す順番にまとめています。何を足すと何が増えるのかを先に把握しておくと、洗うときの判断も速くなります。
養生する3か所——吸気の入口、電気の接点、開口のあるタンク類
ここまでの話を、作業前の手順に翻訳します。覆うのは三か所だけです。
| 養生する場所 | 何が困るか | 養生の仕方 |
|---|---|---|
| 吸気の入口(むき出しフィルターなど) | 濾材が湿る。乾くまで本来の状態に戻らない | ビニール袋をかぶせ、口をゴムかテープで軽く留める。外し忘れ防止に目立つ色を使う |
| 電気の接点(バッテリー端子、後付けの接続部、ヒューズボックスの蓋) | 接点に水が残ると、あとから不調の原因を探しづらくなる | ラップやビニールで包む。特に自分で増やした接続部を優先する |
| 開口のあるタンク類(キャップ、ブリーザーの口) | 中身に水が混じる。オイル側なら特に困る | キャップが確実に閉まっているかを先に確認し、その上から覆う |
タンクについて、当店の製品を例に具体的に書きます。P03 オイルキャッチタンク 350ml(¥4,800)は、ブローバイガスに含まれるオイルや水分を分離して溜めておく部品です。中に水分が溜まることを前提にした部品なので、外から水を足す意味はまったくありません。むしろ、溜まったものの量と状態を見てエンジンの調子を知るという使い方をしているなら、外から入った水はその判断を鈍らせます。素材は精密加工されたビレットアルミニウム、アダプターサイズは12mmという仕様ですが、洗車の前に確認するのはそこではなく、単純にキャップとホースの継ぎ目です。
P06 クーラントタンク(¥6,800)も同じ考え方です。容量800ml、ジョイントサイズ10mmで、内部にはアノダイック電解被膜、外部はウレタン塗装という仕様になっています。洗う前に見るのは、外側の汚れではなくキャップの締まり具合です。ここが緩んでいれば、上から水をかけた瞬間にいちばん困る場所へ水が入ります。外装の塗装は水そのものより、強い薬剤や研磨で傷むほうが早いので、洗剤の選び方のほうに気を配ってください。
吸気については、当店のP02 エアーフィルター 76mmφ(¥8,800)のように清掃して繰り返し使えるフィルターであっても、「濡らして構わない」わけではありません。清掃は手順と乾燥までを含めて一つの作業です。洗車のついでに水がかかった、という状態は、その手順の途中で止まっているのと同じことになります。雨とむき出しフィルターの関係はむき出しエアクリと雨の日に詳しく書きました。
高圧で当てない、上から当てない——方向の話
養生が済んだら、次は水の当て方です。ここは二つの原則で足ります。
ひとつめ、高圧で近づけない。高圧洗浄機の水流は、狙った隙間に対して驚くほど深く入ります。特にパッキンやシールの合わせ目に対して直角に当てると、普段は水を止めている部分を押し切ってしまうことがあります。エンジンルームを洗うなら、ホースから素直に流れる程度の水量で十分です。汚れは水圧ではなく、洗剤と時間と布で落とします。
ふたつめ、上から当てない。上向きの面に落ちた水は、その面のどこかに溜まります。溜まった水は、部品の合わせ目や、ボルトの座面や、カバーの継ぎ目へ、時間をかけて落ちていきます。当てた瞬間には入らなかった水が、あとから入るのが厄介なところです。だから、水は斜め下方向へ流すように当てます。上面に載せない、が原則です。
もうひとつだけ付け加えると、エンジンが冷えていることを必ず確認してください。熱い部分に冷たい水がかかると、部品によっては急な温度差を受けることになります。走ってきた直後は、しばらく置いてから始めます。
洗ったあとの乾燥——どこに水が溜まるかを知っておく
洗う作業より、乾かす作業のほうが結果を左右します。残った水は、そのままにしておくと接点のまわりや金属の合わせ目に居座り続けます。
水が溜まりやすい場所は、だいたい決まっています。部品の上面にできた窪み、タンクの肩の部分、ボルトの座面のまわり、カバーとカバーの継ぎ目、そして養生に使ったビニールの内側。最後のひとつは見落としがちですが、袋の外側を伝った水が口のところに溜まっていることがあります。外すときは、口を下に向けてから外してください。
乾かす順番はこうです。まず布で拭ける水を全部拭く。次に、拭けない隙間の水を送風で飛ばす。それからボンネットを開けたまましばらく置きます。すぐにエンジンをかけて熱で飛ばそうとする方もいますが、閉じた状態で温めると、飛んだ水分が別の場所で結露して戻ることがあります。開けたまま風を通すほうが確実です。
冬場に走る方は、水の話に塩の話を重ねて考えてください。融雪剤が付いた状態で乾くと、乾いたあとに残るのは塩です。この場合はむしろ「洗い流す」ことに意味が出てきます。判断の分かれ目は融雪剤と金属部品の付き合い方にまとめました。
そもそも「洗う」より「拭く」で足りることが多い
ここまで洗い方を書いてきて最後にこう言うのも妙ですが、実際のところエンジンルームの汚れは、拭くだけで大半が片付きます。
理由は汚れの性質です。冒頭に出てきた「白い粉」は乾いた埃で、これは水を使わなくても払えます。むしろ水をかけると泥になって、隙間へ流れ込みます。「黒い筋」のほうは油分を含んだ汚れなので、水では落ちません。落とすのは洗剤と布の仕事です。つまり、どちらの汚れに対しても、水の役目は主役ではないのです。
実際の手順としては、こうなります。乾いた埃を柔らかい刷毛で払う。中性洗剤を薄めた液をマイクロファイバーの布に含ませ、固く絞る。上から下へ、面ごとに拭く。汚れの濃い部分だけ、布を替えて二度拭く。最後に乾いた布で水気を取る。この流れなら、養生は必要ですが、水が入る心配はほとんどありません。
それでも水を使いたくなるのは、手の届かない奥のほうに汚れが見えているときです。そのときは、まず届く範囲を全部拭き終えてから考えてください。拭き終わったあとの「残り」がどれだけあるかで、水を使う必要性が正確に見えます。手前だけ見て「全体が汚い」と判断すると、必要のない水を使うことになります。エンジンルームまわりの製品はパフォーマンス一覧にまとめています。
まとめ:洗う前に確認すること
社外部品が載ったエンジンルームは、純正の状態より水に対して不利です。ただ、不利になっている場所は数えられます。数えて、覆って、当て方を変える。それだけで、できることの幅はかなり広がります。
- エンジンが十分に冷えているか。走行直後は始めない
- 吸気の入口を覆ったか。むき出しフィルターは袋で包み、外し忘れないよう目立つ色にする
- 電気の接点を覆ったか。純正より、自分であとから増やした接続部を優先する
- タンクのキャップは確実に閉まっているか。P03 オイルキャッチタンク 350ml(¥4,800)、P06 クーラントタンク(¥6,800)とも、外側の汚れより先にキャップを見る
- 高圧で、合わせ目に直角に当てていないか。汚れは水圧ではなく洗剤と布で落とす
- 上向きの面に水を載せていないか。溜まった水はあとから隙間に落ちる
- 乾かす手順を決めてあるか。拭く、送風、ボンネットを開けたまま置く。閉じて温めない
- そもそも拭くだけで足りないか。届く範囲を拭き終えてから、水の要否を判断する
エンジンルームをきれいにしておくと、滲みや緩みに早く気づけます。汚れを落とすこと自体より、そちらのほうが本当の目的です。だとすれば、点検のついでに毎回少しずつ拭くのが、いちばん理にかなったやり方ということになります。
FEATURED IN THIS ARTICLE
この記事で紹介した商品
関連記事






