エンジンルームの色数を数える|青・赤・銀が混ざった機械室を落ち着かせる

洗車が終わって、最後にボンネットを開けたときのことでした。三年かけて少しずつ手を入れてきたエンジンルームです。一点ずつ選んで、そのたびに満足して閉じてきた。それなのに、その日は開けた瞬間に目がどこにも落ち着かない感じがしました。青いホースがあって、赤いキャップがあって、金色のボルトがあって、削り出しの銀色があって、そのあいだに純正の黒い樹脂がのぞいている。どれも自分で選んだものなのに、まとまって見えない。
不思議なのは、一点ずつ見ればどれも気に入っているということです。青いホースは買った日から好きですし、金色のボルトも安いものではありません。個々の選択が正しいのに、集まると散らかる。これはどう考えたらいいのか。そもそもエンジンルームに「まとまり」を求めるのが変なのか。ボンネットを開けたまま、しばらく突っ立っていました。
この記事では、エンジンルームを「機械が入っている場所」ではなく「見せる面」として整理する手順をお話しします。使うのは、私たちが内装をデザインするときの手順そのものです。色数を数える、面積の順に並べる、光の条件を変えて見る。この三つを順にボンネットの中へ持ち込みます。難しい理屈は出てきません。数えるところから始めます。
色数を数える——純正の黒と銀に、何点足されているか
最初にやることは、数えることです。ボンネットを開けて、そこにある色を種類ごとに数えてください。黒、銀、青、赤、金。だいたい五分もあれば数え終わります。
数え終わったところで、純正の状態を思い出してみてください。手を入れる前のエンジンルームは、ほとんど黒と銀の二色で出来ていたはずです。樹脂のカバーが黒、金属の地肌が銀。そこに、ごく少数の色が点として置かれている。オイルレベルゲージの持ち手、冷却液のキャップ、ウォッシャー液の注ぎ口。
この配色は偶然ではありません。あの少数の色は、探すための色です。点検のときに手を伸ばす場所、開けてはいけない場所、順番を間違えると困る場所。そこだけに色を置いて、それ以外を黒と銀に抑えてある。背景の色数を絞っているからこそ、点として置いた色が遠くからでも見つかります。これは私たちが内装のスイッチや警告表示を設計するときとまったく同じ考え方で、目立たせたいものがあるなら、目立たせたくないものの色数を先に減らすのが順番です。
ここから、散らかって見える理由が説明できます。青や赤や金の部品を足すと、探すための色と、飾るための色が同じ画面で競合します。目はどれが重要な点なのか判断できなくなり、結果として「どこにも落ち着かない」という感覚になる。散らかっているのは趣味の問題ではなく、色の役割が混ざっているからです。
面積の大きい順に整理する——ホース、カバー、タンク、ボルト
色数を数えたら、次は面積の順に並べ替えます。印象に効く量は、値段の順ではなく面積の順で決まります。ここを取り違えると、お金をかけたのに何も変わらないという結果になります。
| 大きさの区分 | 部品の例 | 印象への効き方 | 手を付ける順 |
|---|---|---|---|
| 線 | ホース類、配線の被覆 | 長く伸びるので視線を引っ張る。一本替えるだけで全体が動く | 最初 |
| 面 | エンジンカバー、遮熱のシールド | 背景そのものを作る。この面の色が全体の地になる | 二番目 |
| 塊 | タンク類、キャッチタンク | 主役になりやすい。ひとつだけ色が違うと浮く | 三番目 |
| 点 | ボルト、キャップ、小さな金具 | 一点あたりは小さい。数が揃って初めて効く | 最後 |
この表でいちばん伝えたいのは、ボルトから始めてはいけないということです。色付きのボルトは一本あたりが手頃で、しかも交換が楽なので、最初に手が伸びやすい部品です。ところが面積としては最小で、しかも数が多い。数が多いということは、途中で止めると色がばらけるということでもあります。半分だけ替わった状態がいちばん散らかって見えます。
逆に、いちばん効くのは線です。ホースは細くても長い。長いものは視線を運びます。だから、色数を減らしたいなら、まずホースの色を見直す。一本の色を落ち着かせるだけで、写真に撮ったときの印象がはっきり変わります。
面については、遮熱のシールドのような「新しく足す面」が効きます。当店のP15 断熱プロテクションシールド(¥4,500)は、軽量アルミ合金でエンジンルーム内の熱気を遮るための部品で、吸気温度を約10〜15℃低減する機能部品です。サイズはLargeとSmallから選びます。ここで注目したいのは、これが機能部品でありながら、同時にひとつの大きな面を作るという点です。面ができれば、その裏側の雑多なものが隠れます。色数を減らす作業と、熱を抑える作業が、同じ一手で進む。こういう部品が、整理の起点として効きます。
色を減らす方向と、1色に集める方向、どちらでも成立する
整理の仕方には、方向が二つあります。どちらが正しいということはなく、どちらかに決めることが正しいと考えてください。
ひとつめは、色数を減らす方向です。純正が持っていた黒と銀の構成に戻していく。ここに戻すと、探すための色が本来の役目を取り戻し、機械室としての緊張感が出ます。当店のタンク類はこの方向に置ける部品で、P06 クーラントタンク(¥6,800)は容量800ml、ジョイントサイズ10mm、内部にアノダイック電解被膜、外部はウレタン塗装という仕様です。P04 オイルキャッチタンク(¥4,800)も精密加工されたビレットアルミニウム製で、アダプターサイズは12mm。どちらも塊としてそれなりの体積を持つ部品なので、この二つが同じ調子でまとまっているかどうかは、全体の印象にかなり効きます。
ふたつめは、アクセント色を1つに決めて集める方向です。青なら青だけ。赤なら赤だけ。そして、その色を置くのは面積の小さい部品に限る。やってはいけないのは、アクセント色を二つ以上混ぜることです。青と赤が両方あると、どちらも主張しあって、結果としてどちらも効かなくなります。一色に絞れば、その色を見つけたときに「意図してそこに置いた」と伝わります。
どちらを選んでも成立します。判断の材料は単純で、すでに持っている部品の多いほうに寄せるのが安上がりです。青いホースが何本もあるなら、青に集める方向のほうが、買い替えが少なくて済みます。部品を足していく順番そのものについてはエンジンルームの部品を足す順番にまとめてありますので、これから増やす方はそちらも見ておいてください。
アルマイトの色は光でかなり違って見える
色を揃えようとすると、必ずぶつかる問題があります。買ってきた青と、いま付いている青が、同じ青に見えない。
アルミの部品によく使われるアルマイト——陽極酸化による表面処理——は、塗料を塗って色を出しているのではありません。表面にできた膜の性質で色が見えています。だから、当たっている光の色と、見ている角度で、見え方がはっきり変わります。塗装のように「どこで見ても同じ色」にはなりません。
実務的な対処は二つです。ひとつ、屋外と屋内の両方で見る。ガレージの蛍光灯やLEDの下で合わせた色が、太陽の下ではずれていることがあります。逆もあります。ふたつ、並べて見ないで、離して見る。色を合わせようとして二つの部品をくっつけて比べると、わずかな差が気になります。ですが実際にボンネットを開けたときは、部品同士は離れていて、あいだに黒や銀が入ります。合わせるべきは「隣り合わせたときの一致」ではなく「離れて見たときの調子」です。
ちなみに、当店のP06 クーラントタンクは外側がウレタン塗装です。塗装とアルマイトでは色の出方の性質が違うので、同じ「黒」でも艶や深さが揃わないことがあります。これは不具合ではなく、仕上げの違いです。揃わないことを前提に、艶のあるもの同士、落ち着いたもの同士でゆるくまとめるくらいの構え方が、実際には長続きします。
経年で色が変わる部品を、どこに置くか
もうひとつ、写真では見えない軸があります。時間です。
エンジンルームは、車のなかでも熱と光の条件が厳しい場所です。色が付いた部品は、熱源に近いほど、そして日射を受けるほど、先に変化します。アルマイトの退色や、塗装の艶引けがそれです。厄介なのは、全部が均等に変わるのではなく、条件の厳しい場所から順に変わっていくところで、結果として「同じ色で揃えたはずのものが、数年後にばらけている」という状態になります。
だから、配置を決めるときに一つだけ意識しておくと後が楽です。色物は、熱源から遠く、ボンネットの陰になる側へ置く。逆に、熱源のすぐ近くや、開けたときに真上から光が当たる位置には、黒や銀のように変化が目立ちにくいものを置く。機能上の制約で置き場所が決まっている部品は動かせませんが、選べる余地のある部品なら、この一点を考えておく価値があります。アルマイトがどう変わっていくかはアルマイトの色は褪せるのかに詳しく書きました。
タンク類のように、点検で毎回目をやる部品については、もうひとつ考え方があります。見やすさを色より優先する。冷却液のタンクは、量と状態を見るための部品です。見た目のために見にくくなったら本末転倒なので、まずは液面が確認できる置き方かどうかを決め、色の話はそのあとにします。この優先順位はクーラントタンクの液面とオーバーフローのほうで書いたとおりです。
次の1点を買う前に、写真を1枚撮って数える
最後に、今日から使える習慣をひとつ。部品を買う前に、エンジンルームの写真を1枚撮ってください。スマートフォンで、ボンネットを開けて真上から一枚。それだけです。
写真にすると、立体感と奥行きが落ちます。実物を見ているときは、目が勝手に「これは奥にある」「これは機能部品だ」と補正をかけますが、写真ではその補正が効きません。面積と色だけが残ります。だから数えやすい。私たちが色を検討するときも、実物を眺めるだけでなく、写真に撮って並べます。さらに白黒にして明暗だけを見ることもあります。色を消すと、どの面が大きいかがはっきりするからです。
その写真を見ながら、三つだけ確認します。色は何種類あるか。いちばん面積の大きい色は何か。これから買おうとしている部品は、その色数を増やすのか、減らすのか。増やす方向なら、いま一度だけ立ち止まる価値があります。減らす方向なら、迷わず進んでいい。
この確認は一分で終わります。そして、この一分があるかないかで、三年後のボンネットの中がかなり変わります。パフォーマンス系の製品はパフォーマンス一覧にまとめていますので、次の一点を選ぶときに、面積と色数を頭に置いて見比べてみてください。
まとめ:次の部品を買う前に確認すること
エンジンルームがごちゃついて見えるのは、部品の趣味が悪いからではありません。色の役割が混ざり、面積の順番を無視して手を入れてきたからです。順番を戻せば、買い替えなしでも印象は変わります。
- 色を数える。黒と銀に、いくつ足されているか。五分で終わる
- 探すための色と、飾るための色を分ける。点検のための色と競合していないか
- 面積の順に手を付ける。線(ホース)、面(カバー・シールド)、塊(タンク)、点(ボルト)の順。ボルトから始めない
- 方向を一つに決める。色数を減らすか、アクセント色を一つに集めるか。アクセントを二色混ぜない
- 屋外と屋内の両方で色を見る。アルマイトは光と角度で見え方が変わる。並べずに、離して見る
- 色物は熱源と直射から遠ざける。厳しい場所には黒や銀を置く(P15 断熱プロテクションシールド ¥4,500 のような面部品はここでも効く)
- 点検のしやすさを色より優先する。P06 クーラントタンク(¥6,800)は液面が見える置き方が先、色はその次
- 買う前に写真を一枚撮る。その一点は色数を増やすのか減らすのかだけ確認する
ボンネットの中は、開けたときにしか見えません。だからこそ、開けた人の目には全部が一度に飛び込んできます。整えるのに必要なのは、追加の部品ではなく、数える習慣のほうです。
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