写真と実物の色が違って見える|撮影・モニター・車内の光のあいだで起きること

届いた箱を開けて、部品を手のひらに載せる。窓際まで持っていって、明るいところで見る。そこで、ほんの少しだけ「あれ」と思う。悪いわけではないのです。ただ、頭の中にあった色と、いま手にある色が、ぴったり同じではない。もう一度スマホで商品ページを開いて、写真と実物を並べてみる。どちらも嘘をついていないのに、一致しません。
車内に持ち込むと、印象はまた変わります。さっき窓際で見た色と、シフトレバーの根元に置いた色が、また少し違う。ここまで来ると、どれが「本当の色」なのか分からなくなってきます。私たちは量産車の内外装を手掛けてきたカーデザイナーで、Plus Alpha Designsではシフトノブやグローブを設計し、その撮影もしています。撮る側の事情を隠さずに書きますが、結論を先に言うと、写真で色を完全に伝えることは原理的にできません。できるのは、ずれる方向を知って、あらかじめ見積もっておくことです。
この記事では、なぜ写真と実物の色が違って見えるのかを、四つの段階に分けて説明します。撮影する場所、光源の種類、表示する画面、そして金属の光沢という物理。そのうえで、車内という特殊な環境の話をして、最後に買う前にできる確かめ方をひとつだけ示します。
白いスタジオと、黒い内装は別の世界
商品写真は、たいてい白い背景で撮ります。理由はいくつかあって、形の輪郭がはっきり分かること、他の商品と並べたときに条件が揃うこと、背景を切り抜いて使えること。買う人にとっても、見比べやすい形式です。
ただ、白い背景には副作用があります。白い面は、光をよく返します。つまり撮影の場では、背景も、床も、周囲の反射板も、全部が白い光源として働いている。部品には四方八方から白い光が回り込み、影が浅くなり、暗い部分も持ち上がります。
車内はその正反対です。ダッシュボード、シート、ドアトリム、天井——多くの車で、囲んでいる面は暗い色です。同じ部品を置けば、回り込むのは暗い光になる。影は深く、暗い部分はさらに沈みます。だから、同じ黒でも「白い部屋の黒」と「黒い部屋の黒」は別の見え方になります。
S11 サンダルウッドボールエクステンション(黒)(¥7,800)は、素材がアルミニウム合金とサンダルウッド(白檀)、色は黒、全長は130mm(フル装着時)と90mm(上部パーツ単体)の2段階、重さは130gです。黒と一口に言っても、金属の黒と木の黒では光の返し方が違います。白い背景で撮ると、その差ははっきり写る。ところが黒い内装に置くと、二つの黒が近づいて見えることがあります。写真のほうが「差がよく分かる」状態なのです。
白背景にはもう一つ、面の質感が伝わりにくいという性質があります。光が均一に回るぶん、影がはっきり出ません。影が浅いと、面のわずかな膨らみや、稜線の立ち方が見えにくくなる。実物を手に取ったとき「写真より立体的だ」と感じることがあるとすれば、多くはこれが理由です。逆に言えば、写真は形をおとなしく見せる方向に働いています。
光源が変わると、同じ黒が3種類に見える
次の段階は、光そのものです。光には色があり、それを表すのが色温度という考え方です。青白い光から、赤っぽい光まで幅があります。
撮影では、この色温度を一定に管理します。管理しないと、同じ商品を別の日に撮ったときに色が揃わないからです。ところが、買った人がその部品を見る場所の光は、管理されていません。
| 見る場所の光 | 色に起きること | とくに影響を受けるもの |
|---|---|---|
| 撮影用のライト | 基準として揃えてある | —— |
| 昼間の屋外(晴天) | やや青白く、彩度が上がる | 青系・緑系が鮮やかに見える |
| 曇りの日・日陰 | 青に寄り、全体が沈む | 黒と濃紺の見分けが付きにくい |
| 夕方の斜光 | 赤みが強く乗る | 木部が濃く、赤く見える |
| 室内の照明 | 器具によって大きく変わる | 茶系・ベージュ系 |
影響がとくに大きいのが、天然素材です。S07 サンダルウッドボール(黒)(¥5,800)は、素材がアルミニウム合金とサンダルウッド(白檀)木材、色は黒、重さは110g。木は表面が光を散らすので、当たった光の色をそのまま返します。夕方の光で見れば赤く、曇りの日に見れば沈む。しかも木は一本ごとに木目が違うので、そこへ光の違いが重なります。
ここは、撮る側が正直に書いておくべきところだと思っています。私たちが撮った一枚は、ある特定の光の下での見え方であって、それ以上でも以下でもありません。同じ部品を屋外で撮り直せば、また別の一枚になります。
モニターは、色を「解釈」して表示している
三つめの段階が、画面です。ここが実は、いちばん制御できません。
撮影したデータは、現像して書き出され、決められた色の規格に載って配信されます。ここまでは送る側の管理下です。ところがその先——受け取った端末が、そのデータをどう画面に出すかは、端末側が決めています。
画面の明るさ設定、表示できる色の広さ、そして自動調整の機能。スマートフォンには、周囲の明るさや光の色に合わせて画面の色味を変える機能を持つものがあります。夜に暖色寄りになる設定を使っている方も多いはずです。この状態で商品写真を見れば、写真は暖色に寄って表示されます。同じ人が、同じ写真を、自分の持っている二台の端末で見ただけで違って見える——これは珍しいことではありません。
もうひとつ、見落とされやすいのが周囲の明るさです。同じ画面を、日の当たる窓辺で見るのと、夜の室内で見るのとでは、目のほうの状態が違います。明るい場所では画面の黒が浮いて見え、暗い場所では逆に締まって見える。画面の設定を変えていなくても、見る側の環境で印象は動きます。ネットで見た写真の記憶は、そのときの部屋の明るさとセットで残っている、と考えたほうが実態に近い。
だから商品ページに「モニター環境により色味が実物と異なる場合があります」と書いてあるのは、免責のための決まり文句である以前に、事実の説明です。送る側にできるのは撮影条件を揃えることまでで、その先の一区間は、こちらからは触れません。
金属の色は、周りを映して初めて成立する
ここからは、撮影でも画面でもなく、物理の話です。そして、いちばん根本的な理由でもあります。
光沢のある金属の面が見せている色は、その部品自身の色と周囲が映り込んだ色の合計です。鏡を思い浮かべると分かりやすいと思います。鏡には固有の色がほとんどなく、見えているのは映っているもののほうです。磨いた金属は、その性質を弱く持っています。
だからシルバーの部品は、白い部屋では明るく白っぽく見え、黒い内装の中では暗く落ち着いて見えます。どちらも「本当の色」です。色が変わったのではなく、映しているものが変わっただけです。
これは、写真では原理的に再現しきれません。私たちがどれだけ丁寧に撮っても、その一枚に写り込んでいるのは私たちのスタジオであって、あなたの車内ではないからです。「写真と実物が違う」と感じるうちの一定の割合は、撮影の腕でも画面の設定でもなく、ここに由来します。
設計する側は、この性質を前提に形を決めています。光沢のある面をどこに置くか、どこで光を切るか——稜線の入れ方ひとつで、映り込みの見え方は変わります。つまり金属の部品は、置かれた場所で完成する部品です。スタジオで完成した姿を見せているのではなく、あなたの車内で完成する。写真はその手前までしか写せません。
加えて、アルマイトで着色した部品には、製造のロットによる色の幅もあります。染料が入る量は槽の条件で少し変わるので、同じ品番でも完全に同じにはなりません。この幅をどう考えているかはアルマイトのロットによる色の差に書きました。写真の一枚は、そのなかの一個体を写したものだという前提で見ていただくのが正確です。
車内は、思っているよりずっと暗い
最後の環境が、車の中です。ここには、もう一つ別の要素が加わります。明るさが下がると、人の目は色を見分ける力が落ちるということです。
昼間でも、シフトレバーのまわりは影になります。光は主に上から入り、ダッシュボードやセンターコンソールがそれを遮る。手元は、思っているよりずっと暗い。暗いところでは、彩度の低い色ほど互いに近づいて見えます。濃紺と黒、深緑と黒、こげ茶と黒——明るい場所ではっきり違って見える組み合わせが、車内では区別しにくくなります。
G11 ツートンレーシンググローブ(ブリティッシュグリーン)(¥8,800)は、天然シープスキン(羊革)のハーフフィンガー(半指)グローブで、品番は011、カラー展開はブラック・グリーン・ブラウン・オレンジ。サイズはSmall・Medium・Largeの3展開で、手のひらのいちばん広い部分(親指を除く)を一周させて測った手囲いが目安になります。Smallが20.5〜21.5cm、Mediumが21.5〜22.5cm、Largeが22.5〜23.5cm。やや大きめの作りなので、ぴったりしたフィットを求める方はワンサイズ下を選んでください。
深い緑は、明るい場所では緑としてはっきり見え、暗い車内では黒に近づきます。これは欠点ではなく、性格です。屋外で車の横に立ったとき、あるいは窓を開けて肘を出したときには緑として見え、走っているあいだの手元では落ち着いた黒に寄る。どちらの見え方も使うつもりで選ぶと、期待とのずれが起きません。内装の色にどう合わせるかという考え方はシフトノブと内装の色合わせにまとめました。グローブの一覧には他の色もあります。
買う前に見積もる、たった一つの方法
ここまでの話を全部使える、簡単な方法があります。商品写真を、自分の車内で見ることです。
- スマートフォンで商品ページを開き、写真を大きく表示します。
- 画面の明るさの自動調整と、色味を変える機能を一時的に切ります。
- そのスマホを持って車に乗り、実際に部品を置きたい場所——シフトレバーの横、ステアリングのそば——へ画面を持っていきます。
- その状態で、写真と周囲の内装を交互に見ます。
- 昼と夜、晴れと曇りで、それぞれ一度ずつ見ます。
これで撮影条件のずれは消せませんが、見る場所の光だけは自分のものになります。白い背景の写真であっても、その画面が車内の光を浴びていれば、判断の条件は一段近づきます。とくに効くのが、5つめの「昼と夜」です。夜の車内でどう見えるかを確かめておくと、届いてからの驚きがかなり減ります。
もうひとつ、すでに手元にあるもので当たりを付ける手もあります。似た色の小物——財布、時計のベルト、キーケース——を車内の同じ場所に置いて、そこでどう見えるかを確かめる。「この茶色が車内でこう見えるなら、あの茶色はこのくらいか」という換算ができれば、写真だけを見るより正確です。自分の運転席をきれいに写して記録しておく方法はコックピットの写真の撮り方に書きました。撮り方が分かると、写真がどう作られているかも見えてきます。色や素材をまとめて見比べたい方はシフトノブの一覧から確かめてみてください。
まとめ:ずれる方向を、先に知っておく
写真と実物の色が違って見えたとき、原因は次のどれかです。順に確かめれば、たいてい説明が付きます。
- 撮影は白い背景で行われている。車内の暗い面に置けば、回り込む光が変わって暗く沈む方向にずれる
- 光源の色温度が違う。夕方は赤く、曇りや日陰は青く沈み、木部はとくに影響を受ける
- 画面が色を解釈している。自動の明るさ調整と色味変更を切って見直す
- 光沢のある金属は、周囲を映して色が成立する。写真には撮影場所が映り込んでいる
- アルマイトの着色には、製造のロットによる幅がある
- 車内は暗く、暗いところでは彩度の低い色どうしが近づいて見える
- 買う前に、商品写真を自分の車内で、昼と夜の両方で見る
色を写真で完全に伝えられない以上、私たちにできるのは、どちらへずれるかを正直に書くことだと思っています。白い背景では明るく写り、車内では沈む。光沢のあるものは周りを映す。木は光の色をそのまま返す。この三つを頭に入れて写真を見れば、届いた日の「あれ」は、かなり小さくなるはずです。
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