ステアリングホイールのデザイン要素を解説|スポーク本数・グリップ径・ステアリング径の選び方
ステアリングを買い替えようと商品ページを並べたところで、手が止まる。この相談を、ほんとうによくいただきます。径の数字は書いてある。形も写真で分かる。それでも、スポークが3本と4本で何が変わるのか、320mmと375mmで自分の運転がどちらに転ぶのかは、どこにも書かれていません。結局、いちばん格好よく見えたものを選ぶことになります。
それで当たることもありますが、外したときの外れ方は決まっています。付けてみたら膝がリムの下側に当たる。メーターの上端が隠れる。駐車場で切り返すたびに、思っていたより力が要る。どれも好みが合わなかったのではなく、寸法の選び方が自分の運転と噛み合っていないだけです。そして寸法は、走り出す前に机の上で決められます。
この記事では、ステアリングホイールを組み立てている要素を、スポークの本数・グリップの太さ・径・形状・素材と色の順にほどいていきます。それぞれが運転の何に効くのか、どこを我慢すればどこが楽になるのか。最後に、迷ったときに何から決めればいいかを一本の手順にまとめます。読み終える頃には、商品ページに並んだ数字を、自分の手と自分の運転の言葉に置き換えられるようになっているはずです。
スポークの本数は、視界と手の逃げ場を決める
スポークは飾りではありません。リムに加わった力をボスへ渡す構造材で、何本をどこに配るかで部品の性格が決まります。そして運転席から見たとき、この配り方は二つのことに効きます。メーターがどこまで見えるかと、手をどこに置けるかです。
3本スポーク
いちばん数の多い構成です。左右と下、あるいは左右上と下という配り方が多く、共通しているのはリムの上側が大きく開いていることです。メーターを見る視線がスポークに切られにくく、9時15分の位置に手を置くと、親指がスポークの付け根へ自然に落ちます。握る位置が体のほうで決まってくれるので、初めて社外品に替える方にも扱いやすい構成です。
2本スポーク
左右の2本だけで支える構成で、クラシックな見え方になります。上も下も開いているので視界の抜けはいちばん良く、低い姿勢で座ってメーターを少し下から見るような車と相性が良い。一方、力を受ける柱が2本になるぶん、リムの断面やフレームの作りで剛性を確保する設計が要ります。木やアルミのフレームを持つクラシック系にこの構成が多いのは、そこも理由の一つです。
4本スポークとフラットボトム
下側に2本を開いて出す形が多く、下端まわりの面積を稼げるので、センター部分の作りに余裕が出ます。フラットボトム、つまりD型と組み合わされることが多いのもこの構成です。下端を切り落として膝との間に空間を作り、切り落とした分の強さを2本のスポークで受け直す、という組み立て方になります。
| スポークの本数 | 大きく開く方向 | 得意なこと | 気をつける点 |
|---|---|---|---|
| 2本 | 上と下の両方 | 視界の抜け。手を置ける範囲が広い | 剛性を断面とフレームで作る必要がある |
| 3本 | 主に上 | メーターの見やすさ。握る位置が決まりやすい | 6時付近を握る癖があると手が当たる |
| 4本 | 主に上 | 下端まわりの面積。D型と組みやすい | 下側で手を動かせる範囲は狭くなる |
本数そのものに優劣はありません。決め手は、自分がふだんリムのどこを握っているかです。9時15分から手を動かさない方なら、下側の作りは見た目の話で済みます。渋滞や車庫入れで下まで持ち替える方は、6時の近くにスポークが来る構成だと手が引っかかります。一週間、自分の手の位置を意識してみるだけで答えは出ます。
グリップの太さは、指が回り込むかどうかで決まる
次は太さです。先に言ってしまうと、太さは数字だけを見ても決まりません。同じリムを二人が握って感想が割れるのは、好みが違うからではなく、単に手が違うからです。
基準はひとつです。リムを握ったとき、親指を除いた四本の指先が、リムの向こう側に触れるかどうか。触れるなら、指はリムを引っかけるフックとして働き、握る力をほとんど使わずに保持できます。触れないなら手のひらで押さえる形になり、保持は押しつける力に頼ります。いま乗っている車の純正ステアリングで、今すぐ確かめられます。
手の大きさを数字にしておきたいときは、手囲いを測ってください。手のひらのいちばん広い部分を、親指を除いてぐるりと一周した長さです。当店のグローブのサイズチャートは、XSが19.5〜20.5cm、Sが20.5〜21.5cm、Mが21.5〜22.5cm、Lが22.5〜23.5cmという区切りになっています。手囲いが小さい方ほど、同じリムを太いと感じます。
細い側は指先に情報が濃く届き、持ち替えが速い。太い側は触れている面積が広く、据え切りのような大きな力を手のひら全体で受けられる。どちらが疲れにくいかは力の大きさではなく、その力がどれだけ長く続くかで決まります。この分かれ目はリムの太さで手は疲れるかで細かく扱いました。
細めのグリップを狙って設計したモデルとしては、W06 ピーチランド(¥28,000)があります。天然ピーチウッドと高剛性アルミフレームで組んだハンドクラフトのクラシックモデルで、サイズは375mm、ボルトパターンは70mm PCD・6穴、形状はラウンドのフラットタイプ、ホーンボタン付き。細めのグリップを採用したクラシックシリーズです。
径は、腕の動く量と必要な力の交換
径は、この記事の中でいちばん体感の変わる寸法です。効き方は単純で、腕の動く量と、必要な力の交換だと思ってください。片方を減らせば、もう片方が増えます。
径を小さくすると、同じ舵角に対して手の移動量が減ります。持ち替えの回数が減り、切り始めが速く感じられる。代わりに、てこが短くなるので、据え切りのように路面との摩擦を直接ねじ伏せる操作では力が要ります。停まったまま回す機会が多い方ほど、この差は毎日効いてきます。どのくらい重くなるのかは小径ステアリングにしたら駐車が重いにまとめました。
径を大きくすると逆になります。力は小さくて済み、細かい舵角を当てやすい。ただし手の移動量が増えるので持ち替えは増え、リムが体に近づくぶん、太ももや膝との距離も詰まります。当店のステアリングは、320mm・340mm・375mmの3つのサイズで展開しています。
| サイズ | 該当するモデル | 形状 | 重量 |
|---|---|---|---|
| 320mm | W03 Dマン/W04 Dマンフォージド | D型/フラットタイプ | 500g |
| 340mm | W01 ディーピー/W02 ディーピーフォージド | ラウンド/ディープタイプ(深さ90mm) | 450g |
| 340mm | W05 フリスビー | ラウンド/フラットタイプ | 450g |
| 375mm | W06 ピーチランド/W07 ゴッドファーザー | ラウンド/フラットタイプ | 記載なし |
表を並べて気付かれたと思いますが、径が小さいほうが軽いとは限りません。320mmのD型が500g、340mmのディープタイプが450gです。径と重さは別の寸法で、切り始めの手応えには両方が効きます。数字を見比べるときは、この二つを分けて読んでください。
形状は、座り方をやり直せる要素
形状は、径と組にして考える要素です。同じ340mmでも、リムの面が手前に出ているかどうかで座り方そのものが変わります。
ラウンドのフラットタイプは、どこを握っても同じ形が続きます。持ち替えの自由度がいちばん高く、手の置き場所を少しずつずらして休ませられるので、長距離で効いてきます。W05 フリスビー(¥48,000)は、サイズ340mm、カラーはグロスブラック、素材はドライカーボン、ボルトパターンは70mm PCD、形状はラウンドのフラットタイプ、重量450g、ホーンボタン付きです。
D型(フラットボトム)は、下端を落として膝との間に空間を作ります。乗り降りのときに太ももが引っかかりにくく、シートを前寄りにしている方ほど違いが分かります。代わりに、6時の近くを握る癖のある方は握る場所を上へずらすことになります。W03 Dマン(¥48,000)は、サイズ320mm、カラーはマットブラック、素材はドライカーボン、ボルトパターンは70mm PCD、形状はD型のフラットタイプ、重量500g、ホーンボタン付きです。
ディープディッシュは、リムの面が手前に出ている形です。腕が伸び切ってしまう座り方の方や、シートを後ろに下げた分だけリムが遠くなった方には、この深さが効きます。W01 ディーピー(¥48,000)は、サイズ340mm、カラーはグロスブラック、素材はドライカーボン、ボルトパターンは70mm PCD、形状はラウンドのディープタイプで深さ90mm、重量450g、ホーンボタン付きです。
ただし、面が手前に出るということは、リムとメーターの位置関係も変わるということです。深さを足したらメーターの上端が隠れた、という話は珍しくありません。ボスの厚みでも同じことが起きるので、深さとボスは合わせて考えるのが確実です。
色と素材は、コクピットの温度を決める
ここまでは手が決める話でした。最後の要素は目が決めます。コクピットは、面積でいえばほとんどが黒か濃いグレーです。そこに一つだけ質感の違うものを置くと、視線はそこへ集まる。ステアリングは、ちょうどその位置にある部品です。だから素材と色は、内装のトーンに合わせるか、意図して外すかの二択になります。
カーボンは、織り方や成形の仕方で見え方が変わります。繊維を織った生地を使うものは織り目が光の角度で表情を変え、短い繊維を圧縮して成形する鍛造(フォージド)カーボンはマーブル状の模様になります。グロスは映り込みが強く、面の平らさがそのまま見え方になる。マットは光を散らすので落ち着いた顔になり、指の跡も目立ちにくい。木は内装の樹脂やレザーと温度感が近く、古い車の内装によく馴染みます。アルミは冷たく硬い顔をするので、少しだけ入れると全体が締まります。
W07 ゴッドファーザー(¥32,000)は、この少しだけ入れるという考え方を形にしたモデルです。素材はPPと高剛性グロスアルミフレーム、サイズは375mm、ボルトパターンは70mm PCD・6穴、形状はラウンドのフラットタイプ、ホーンボタン付属。グロスブラックのグリップにシルバーのグロスアクセントを合わせた、スリムなグリップデザインが特徴のクラシックシリーズです。
迷ったときのやり方を一つ挙げると、内装で二番目に広い面の色に寄せると失敗しにくいです。いちばん広い面はたいてい黒なので、そこに合わせても情報が増えません。シートのステッチ、ドアトリムの差し色、メーターの針。そのあたりに一つでも共通点があると、後から見ても理由のある選択に見えます。質感の並びはステアリングホイールのカテゴリで見比べられます。
なお、握ったときの摩擦と厚みは、グローブで後から少し足せます。太さを変えずに保持を楽にできるので、細い側を選んだあとの調整として使えます。素材ごとの違いはグローブのカテゴリの説明も参考にしてください。
迷ったときに決める順番
要素が五つもあると、どこから手を付けるかで悩みます。設計の側から見て、後戻りの少ない順に並べるとこうなります。
- 膝と太ももの空間から、形状を決める。ここが足りないと、他が合っていても毎日つらい思いをします。狭ければD型、余裕があればラウンド。腕が伸び切るならディープディッシュを候補に入れます
- いまの運転の中身から、径を決める。据え切りが多いなら大きめ、持ち替えが多く手の移動を減らしたいなら小さめ。好みではなく、一週間の運転を思い出して決めます
- 自分の手から、太さを決める。四本の指先がリムの向こう側に触れるかどうかを、いまの車で確かめておきます
- ふだん握る位置から、スポークの本数を決める。下まで持ち替えるかどうかが分かれ目です
- 内装のトーンから、素材と色を決める。ここは最後で構いません
- 最後にボスとPCDを合わせる。当店のステアリングはいずれも70mm PCDです
順番とは別に、見ておくことがもう一つあります。純正のステアリングには、ホーンのほか、車種によってエアバッグや手元のスイッチが付いています。交換するとこれらの扱いが変わり、どこまでを残してどこからを割り切るかは車種ごとに事情が違います。ここは机の上で決め切らず、車の状態を見ながら判断してください。迷う場合は、車種と年式を添えてご相談ください。
まとめ
ステアリングのデザイン要素は、見た目の話に見えて、そのほとんどが体の話です。判断の順序をもう一度並べておきます。
- スポークの本数は、視界の抜けと手の逃げ場を決める。ふだんリムのどこを握っているかで選ぶ
- 太さは数字ではなく、四本の指先がリムの向こう側に触れるかどうかで判断する
- 手囲いを測っておくと目安になる。当店のグローブのチャートはXSが19.5〜20.5cm、Lが22.5〜23.5cm
- 径は、腕の動く量と必要な力の交換。小径は手の移動が減る代わりに据え切りが重い
- 当店のサイズは320mm・340mm・375mm。320mmが500g、340mmが450gで、小さいほうが軽いとは限らない
- 形状は座り方をやり直せる要素。膝が近ければD型、リムが遠ければディープディッシュ
- 素材と色は最後でよい。内装で二番目に広い面の色に寄せると失敗しにくい
- ホーンやエアバッグ、手元のスイッチの扱いは車種ごとに違う。ここだけは現物を見て決める
五つの要素は、独立しているようでいて、どれか一つを動かすと他が動きます。だからこそ、後戻りの少ない順に決めていくのがいちばん早い。膝、径、太さ、スポーク、そして色。この順で一度並べてみてください。
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