S01、W03、E08——型番の付け方に、設計の順番が残っている

商品ページを眺めていると、名前の頭にアルファベットと数字が付いていることに気づきます。S01、S18、W03、E08。カタログの整理番号だろうと流してしまえばそれまでですが、順番に並べてみると、数字が飛んでいる箇所があったり、ひとつの商品に番号が二つ付いていたりする。ここまで来ると、何かの規則があるらしい、と気になってきます。
実際、規則はあります。しかも、後から整理して付けたものではなく、作りながら付けていったものなので、私たちがどの順で何に手を付けてきたかが、そのまま記号として残っています。設計チームの履歴書のようなものです。読んで得をする情報かと言われると微妙ですが、少なくとも商品を探すときの手がかりにはなります。
この記事では、型番の頭文字が何を表しているのか、番号がどういう順で振られているのか、一覧に見当たらない番号があるのはなぜか、そして「ズミノブ」「コブノブ」「フリスビー」といった名前がどこから来るのかを書きます。最後に、番号を増やしていくと設計が窮屈になっていくという、あまり語られない話にも触れます。
頭文字が示すのは、部品が車のどこにいるか
頭文字は製品の種類ではなく、部品が車の中のどこにいるかで分けています。設計する側の頭の中では、部品はカテゴリではなく場所で並んでいるからです。
| 記号 | 受け持つ範囲 | 例 |
|---|---|---|
| S | シフトノブ(手が握る先端そのもの) | S01 タートルネックボール |
| E | レバー側(延長・カバー・レバー周りの機構) | E09 リバースレバー |
| W | ステアリングホイール本体 | W07 ゴッドファーザー |
| G | グローブ(手そのものに着けるもの) | G01 本革製レーシンググローブ(ブラック) |
| B | シートベルト・ハーネス(体を留めるもの) | B03 6点式レーシングハーネス |
| P | パフォーマンス(エンジンルームとメーター周りを中心に、走りを支える部品) | P06 クーラントタンク |
| A | その他アクセサリー(上のどれにも属さない小物) | A03 アルミ フットプレート |
| C | アパレル(車に付けないもの) | C04 ロゴパーカー |
| O | アウトレット(傷ありとして状態を明記して出すもの) | O02【!傷あり注意!】タートルネックボール シルバー |
SとEの分け方が、この表でいちばん実務的です。同じシフトレバー周りでも、手が直接握る先端がSで、その手前の軸や機構がE。設計上、この二つはまったく別の考え方で作ります。Sは握り心地と見た目が主で、Eは寸法の適合と剛性が主です。買う側から見ても、Sは好みで選び、Eは寸法で選ぶことになります。
E09 リバースレバー(¥4,800)は、Eの性格がよく出ている一本です。素材は高品質・高重量のビレットアルミニウム、カラーはブラック、重量100g、上部開口幅20mm、下部開口幅40mm、本体サイズは高さ65mm・幅40mm。数字がずらりと並ぶのは、これが「好みで選ぶ部品」ではなく「合うか合わないかで選ぶ部品」だからです。幅20mm以下の純正・社外シフターに装着できますが、購入前にシフトレバーの寸法をご確認ください。
同じEの中でも、E01 フラットカバー(¥4,800)は最初期の一本です。高品質の機械加工アルミニウムで作られたシフトノブカバーのマウントで、内蔵の六角ネジで固定し、8mmから12mmのシフトレバー径に対応します。番号が01ということは、Eという枠を作ったときの最初の課題がここだった、という記録でもあります。
Aという枠は、少し性格が違います。上のどれにも属さない小物のための場所で、フットプレート、ステアリングハンガー、方向指示レバーのエクステンション、チタンボルト、キーホルダーまで入っています。設計する場所ではなく、設計する場所が決まらなかったものの集まりです。分類として美しくはありませんが、無理にどこかへ押し込むより正直だと考えています。
番号は人気順ではなく、作った順
よく誤解されるのですが、番号は売れている順でも、おすすめ順でもありません。形が決まった順です。だから、S01は「一番人気」ではなく「一番最初に形が決まったシフトノブ」という意味しか持っていません。
その S01 がS01 タートルネックボール(¥5,800)であることには、理由があります。素材はアルミニウム合金、色はチタニウムブルー、重さは120g、ノブ本体ネジは M18×P1.5。ネック部分がボール状のトップへ滑らかにつながる形で、私たちが最初に取り組んだ課題は「握る面と、レバーへ向かって細くなる面を、段差なくつなぐ」ことでした。単純に見えて逃げ場のない形で、ここを最初にやっておかないと、その後のどの形も評価できない。基準になる一本を先に作った、という順序です。
この順序は、番号が進むにつれて意味を持ってきます。S02、S03と続く番号は、S01で決めた基準に対して何を変えたのかの記録になる。色を変えたのか、首の長さを変えたのか、素材を足したのか。番号を追うと、私たちが何に興味を移していったかが分かるようになっています。1本のシフトノブがどうやって形になるかは、1本のシフトノブができるまでに書きました。
番号が二つ付く商品と、一覧に見当たらない番号
番号を眺めていると、二つの引っかかりに出会います。
ひとつは、ひとつの商品に番号が二つ付いているケース。メータースタンドがそれで、P07/P08、P09/P10、P11/P12 という具合に並んでいます。これは、メーターの径が53mmと60mmの二種類あり、番号としては別々に押さえたものの、商品ページとしては一つにまとめているからです。設計上は別番号、売り場では一つ。番号のほうが先にあって、売り場が後から整理された結果です。
もうひとつは、一覧に見当たらない番号です。ここは誤解されやすいので、はっきり書きます。見当たらない番号の多くは、作らなかったのではなく、作ったけれど今は在庫がないだけです。番号は製品に一度付いたら再利用しません。だから、在庫が切れている間はその番号が一覧から消えて見えます。
形にならずに終わった案が番号を持つことも、まれにあります。この場合、その番号は空けたままにします。後から別の製品に回すことはしません。理由は次章に書きますが、要するに番号の順序が壊れると、履歴としての意味がなくなるからです。
なぜ再利用しないのか。番号を空欄のままにしておくと、記録として穴が開いたように見えるので、埋めたくなる気持ちは正直あります。それでも埋めません。番号が「作った順」を意味しているのに、あとから別の製品をそこに入れると、順序が嘘になるからです。整理番号としては不便でも、履歴としては正しいほうを選びました。
「ズミノブ」「コブノブ」「フリスビー」——名前はどこから来るか
型番の隣にある名前は、番号とは別の論理で付いています。私たちが付けてきた名前を並べてみると、だいたい三つに分かれました。
- 形をそのまま呼んだ名前。「ホワイトボールエクステンション」のように、色と形と機能を並べただけのもの。探すときにいちばん親切ですが、印象には残りません。
- 形の連想から来た名前。「コブノブ」は手のひらに乗るこぶのような膨らみから、「フリスビー」は平らな円盤の印象から、「タートルネックボール」は首の立ち上がり方から。設計中に誰かが口にした一言が、そのまま残ったものが多いです。
- 佇まいから来た名前。「ゴッドファーザー」のように、形の説明ではなく、置いたときの雰囲気を指した名前。この種類はいちばん意見が割れます。
名前が付く瞬間には、共通点があります。三人のうち誰かが呼び始めて、他の二人が言い直さなかったときに定着する。会議で決めた名前が定着した記憶はほとんどありません。逆に、仮に呼んでいただけのつもりの名前が、気づけば図面のファイル名になり、そのまま商品名になっていることが何度もありました。
S13 ホワイトボールエクステンション(¥7,800)は、素材がアルミニウム合金とサンダルウッド(白檀)、色はオフホワイト(クリーム)、全長は130mm(フル装着時)と90mm(上部パーツ単体)の2段階、重さ130g、ノブ本体ネジは M18×P1.5。名前は完全に説明的です。ただ、この製品は「白い」「丸い」「伸びる」の三つで探されることが多いので、結果的にこの名前が最も見つけやすい。愛称が付かなかったことにも、それなりの意味があります。異素材を組み合わせる理由については2つの素材を組み合わせる理由もどうぞ。
型番で呼ぶ社内と、名前で呼ぶお客さんのあいだ
社内では、ほぼ型番でしか呼びません。「S13の木の部分」「E09の下側の開口」という具合です。図面もデータも型番で管理しているので、そのほうが速い。ところが、お問い合わせでいただく文面はほとんどが名前です。「白いやつの、短いほうで使いたいのですが」といった形で来ます。
この温度差は、最初のうち小さな摩擦を生みました。こちらが型番で返すと、相手には伝わらない。名前で返すと、社内の記録と突き合わせるのに手間がかかる。今は、返信では必ず型番と名前を両方書くようにしています。地味ですが、これで取り違えがほぼ消えました。
ひとつだけ、お願いに近いことを書きます。お問い合わせのときは、色や仕様の違いがある製品は型番があると確実です。同じ形で色違いが並んでいる製品があり、名前だけだとどちらか決められないことがあります。もちろん、型番が分からなければ「商品ページのこれです」で構いません。こちらで型番に直します。
どちらが正しいという話ではありません。作る側にとって製品は「設計の履歴の中の一点」で、使う側にとっては「自分の車に付く、あの形」です。見ているものが違うのだから、呼び方が違うのは当たり前です。シフトノブやエクステンションの一覧では型番と名前が並んで表示されるようにしてあるので、どちらから探していただいても構いません。
番号が増えるほど、前の設計に縛られる
最後に、あまり語られない話を書きます。番号が増えるのは嬉しいことばかりではありません。番号が増えるほど、新しい案が窮屈になります。
理由は二つあります。ひとつは、既にある形との重複を避けようとすること。S01からS29まで並んだ後で新しい形を考えると、「これはS08に近くないか」「S26と握った感じが被らないか」という検討が必ず入ります。この検討自体は正しいのですが、やりすぎると、被らないことが目的になって、そもそも良い形かどうかの議論が後回しになる。
もうひとつは、統一した仕様に縛られること。当店のシフトノブは本体ネジを M18×P1.5 に統一し、付属アダプター(M8×P1.25/M10×P1.25/M10×P1.50/M12×P1.25)で車側のネジ径を受けています。この方式は買う側にとって大きな利点ですが、設計する側から見れば、ノブの中に M18 のネジを切れるだけの肉を必ず確保しなければならない、という制約でもあります。細く見せたい形ほど、この制約が効いてきます。
だから私たちは、番号を先に押さえないことにしました。「次はS30を作る」と決めてから形を考えると、その番号を埋めるために何かを作ってしまう。形が決まってから番号を付ければ、埋めるべき空欄は存在しません。次の一本にどの番号を空けているか、という問いへの答えは「空けていない」です。空けないことが、いちばんの締切になっています。
まとめ
型番の読み方を整理します。
- 頭文字は種類ではなく場所。S=握る先端、E=レバー側、W=ステアリング、G=グローブ、B=ベルト類、P=エンジンルームとメーター周り、A=その他小物、C=アパレル、O=アウトレット
- SとEの違いは、Sが好みで選ぶ部品、Eが寸法で選ぶ部品ということ
- 番号は人気順ではなく、形が決まった順。S01は最初に基準を作った一本という意味
- P07/P08 のように番号が二つ付くのは、設計上は別番号でも売り場を一つにまとめているから
- 一覧に見当たらない番号の多くは、作らなかったのではなく在庫がないだけ。番号は再利用しない
- 名前は「説明的」「形の連想」「佇まい」の三種類。三人のうち誰かが呼び始め、他が言い直さなければ定着する
- 問い合わせのときは、型番と名前のどちらか片方で構いません。こちらは両方書いて返します
番号はただの整理記号ですが、順に並べると設計の順序が見えてきます。商品を探すついでに、そんな読み方もしていただけたら嬉しいです。
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