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ドライカーボンとフォージドカーボンの違いを解説|ステアリング選びに知っておきたい素材知識

2026年4月23日 / 約11分

商品ページを並べて眺めていて、手が止まることがあります。値段は同じ¥48,000、ボルトパターンも同じ70mm PCD、写真の中の形もよく似ている。それなのに素材の欄は、片方が「ドライカーボン」、もう片方が「ドライフォージドカーボン」。拡大してみると、たしかに柄が違います。一方は細かい格子が規則正しく並び、もう一方はインクを流したような不規則な模様が走っている。

ここで多くの方が、フォージドのほうが新しい技術なのだろうか、格子のほうが本物のカーボンなのだろうか、と考えます。どちらも半分だけ当たっていて、半分は外れています。この二つは上下の関係ではなく、繊維の並べ方が違うだけです。そして、その並べ方の違いが、強さの出方・見え方・一本ごとの表情の揺れという、性格の違う三つの結果を連れてきます。

この記事では、それぞれが工場でどう作られているかを先に分解し、そのうえで、ステアリングを選ぶときに実際どこへ効いてくるのかを順に見ていきます。繊維の向きと強さの関係、織り目とマーブルという見え方の違い、同じ型番でも一本ずつ模様が変わる理由、そして当店の5モデルを並べた比較と、選ぶ順番。読み終える頃には、素材の欄を見ただけで、その一本がどういう性格なのかが読めるようになっているはずです。

カーボンは、繊維と樹脂の二人三脚でできている

「カーボン」と一言で呼びますが、部品として成立しているのは二つの材料の組み合わせです。力を受け持つ炭素の繊維と、その繊維をあるべき位置に留めて形に固めている樹脂。繊維が主役で、樹脂は繊維を並べたまま動かないようにする裏方です。この役割分担を頭に置くと、ドライとフォージドの違いは「繊維をどう並べたか」の一点に集約されます。

なお、この二つのほかにウェットカーボンという作り方もあります。三つを横に並べた話はドライ・ウェット・フォージドカーボンの違いにまとめましたので、製法そのものを深く知りたい方はそちらへ。この記事は、ステアリングで実際に選択肢になる二つに絞って掘り下げます。

ドライカーボン——布を重ねて、方向を決める

炭素繊維を布のように織り、あらかじめ樹脂を含ませたシート(プリプレグと呼ばれます)を、型の上に一枚ずつ重ねていきます。重ね終えたら型を閉じ、熱と圧力をかけて樹脂を固める。ここで大事なのは、シートを何枚、どの角度で重ねるかを人が決めているという点です。繊維の向きを揃えて重ねるのか、角度をずらして挟むのか。この積層の設計が、そのまま部品の強さの配り方になります。

表面に見えている規則正しい格子の柄は、いちばん外側に来た布の織り目が、透明な層の下から透けているものです。柄を印刷しているわけではなく、構造がそのまま顔になっている。だから、糸の太さや織り方が変われば、見え方も一緒に変わります。

フォージドカーボン——刻んだ繊維を、型に詰める

もう一方のフォージドカーボンは、布を使いません。炭素繊維を短く刻み、樹脂と混ぜた状態で型に詰め、圧力をかけて固めます。名前にある「フォージド(鍛造)」は、金属を型で押して形にする工程と見た目が似ていることから来た呼び方で、金属の鍛造そのものが起きているわけではありません。

刻まれた繊維は、型の中で押されながら、ばらばらの向きに散らばります。だから表面には織り目ではなく、大理石の断面のような不規則な流れが現れる。布を織って裁って重ねるという段取りが要らないぶん、入り組んだ形の型にも材料を行き渡らせやすい、という性格も持っています。

強さの出方——方向を持たせるか、方向差をならすか

炭素繊維は、その向きに引っ張られたときにいちばん力を発揮する材料です。ですから、布を重ねて作るドライカーボンは、繊維の向きに沿った力に対して強く、向きから外れた方向では樹脂の粘りに頼る割合が増えます。裏を返せば、どの方向を強くするかを設計する側が選べるということでもあります。力の来る向きが分かっている部品では、これが大きな強みになります。

刻んだ繊維を詰めるフォージドカーボンには、この「向き」がありません。無数の短い繊維がばらばらの角度で入っているので、平均すればどの方向にも似た性質が出ます。極端に弱い方向ができにくい代わりに、一方向へ振り切った強さは出しにくい。強さの話は、ほぼこの一行に収まります。方向を決めるか、方向差をならすか。

ステアリングは、握って回す部品です。リムには曲げとねじりが同時に、しかも握る位置によって違う向きから入ってきます。そのうえ手のひらが直接触れるので、表面の質まで要求される。設計の側から見ると、どちらの作り方でも成立させられる部品で、実際に当店では両方のモデルを並べています。素材の名前だけで上下を決めているわけではない、というのが正直なところです。

もう一つ、よくある誤解を先に外しておきます。ドライだから軽い、フォージドだから重い、という関係にはなりません。当店のステアリングでいえば、340mmのラウンド形状はドライもフォージドも450g、320mmのD型はどちらも500g。重量を分けているのは素材ではなく、サイズと形です。ここは表で見たほうが早いので、あとでまとめて並べます。

見た目の違い——織り目とマーブル

実際に選ぶ段になると、多くの方が最後まで迷うのはここです。強さの議論より、毎日目に入る顔のほうが効きます。

ドライカーボンの織り目は、規則正しく並んでいます。規則があるということは、光が動いたときに縞が面としてまとまって動くということです。角度を変えると、格子の列がそろって表情を変える。遠くから見ても「カーボンだ」とひと目で伝わる分かりやすさがあり、メーターやパネルの直線とも並びやすい。

フォージドカーボンのマーブルは逆で、破片ごとに向きが違うので、光は散ります。角度を変えると、模様の中の別の場所が順番に光る。まとまりよりも、近づいたときの情報量が魅力です。革や木のような有機的な面と隣り合っても、線が喧嘩しません。

見る条件ドライカーボン(織り目)フォージドカーボン(マーブル)
柄の性格規則正しい格子不規則な流れ
光の角度が変わったとき縞が面としてまとまって動く場所ごとにばらばらに光る
遠くから見たときひと目でカーボンと分かる濃淡のある黒に見える
近くで見たとき目の細かさが揃っている同じ場所が二つとない
内装との並び直線的なパネルやメーターと揃う革や木の面と馴染む
細かい線傷柄の規則が乱れて目に留まりやすい模様に紛れやすい

ただし、傷や指紋の目立ち方については、柄よりも表面の仕上げのほうがはるかに強く効きます。同じ織り目でも、光沢か艶消しかで話がまるごと変わる。そちらはステアリングのカーボンが日差しで眩しい|光沢と艶消し、どちらを選ぶかで扱っているので、柄の次はそちらを読んでいただくのが早道です。

一本ずつ模様が違う、ということ

フォージドカーボンには、織り目のカーボンにはない性質があります。同じ型番でも、一本ずつ模様が違う。

理由は作り方にあります。織った布を決めた角度で重ねるドライカーボンでは、型が同じなら柄の出方もよく揃います。対してフォージドは、型に詰めた繊維が圧力を受けてどう流れたかで模様が決まるので、同じ結果を二度作ることができません。これは工程のばらつきではなく、作り方そのものの性質です。木目や石の柄と同じ種類の個体差だと思っていただくのが、いちばん近いと思います。

この性質は、良し悪しの両側を持っています。自分の一本が世界に一つだと言える一方で、商品写真とまったく同じ模様の個体は届かないということでもある。写真の流れ方が気に入って選んだ場合、届いたときに「思っていたのと違う」と感じる余地が残ります。柄の位置まで揃っていてほしい方には、織り目のドライカーボンのほうが期待どおりになりやすい。ここは正直にお伝えしておきます。

ついでに書いておくと、カーボン柄はシフトノブにもありますが、手元で二種類の柄が並ぶと、たいてい主張がぶつかります。柄物は車内に一つ、というくらいがちょうどいい。ステアリングをマーブルにするなら、ノブは無地の金属や革で受けたほうが、どちらも生きます。

当店の5本を、素材と形で並べる

ここまでの話を、実物に当てはめます。当店のカーボンステアリングは5モデルで、いずれも価格は¥48,000、ボルトパターンは70mm PCD、ホーンボタン付き。違うのは、素材・サイズ・形状・カラーの4点だけです。

モデル素材サイズ・形状カラー重量
W01 ディーピードライカーボン340mm/ラウンド・ディープタイプ(深さ90mm)グロスブラック450g
W02 ディーピーフォージドドライフォージドカーボン340mm/ラウンド・ディープタイプ(深さ90mm)グロスブラック450g
W03 Dマンドライカーボン320mm/D型・フラットタイプマットブラック500g
W04 Dマンフォージドフォージドドライカーボン320mm/D型・フラットタイプマットブラック500g
W05 フリスビードライカーボン340mm/ラウンド・フラットタイプグロスブラック450g

表を縦に見ると、意図が透けると思います。W01 ディーピー(¥48,000)とW02 ディーピーフォージド(¥48,000)は、サイズも形状もカラーも重量も同じで、素材だけがドライカーボンとドライフォージドカーボンに分かれています。つまりこの二本は、柄だけを選べるペアです。深さ90mmのディープ形状はリムが手前に来るので、グロスの面が視線に対して起き上がり、織り目もマーブルもよく見えます。

同じことが、W03 Dマン(¥48,000)とW04 Dマンフォージド(¥48,000)にも当てはまります。どちらも320mmのD型・フラットタイプ、マットブラックで500g。素材はW03がドライカーボン、W04がフォージドドライカーボンです。艶消しの面に乗ったマーブルは、光沢の面で見るのとはまた違う静けさがあるので、写真で見比べてみてください。

5本目のW05 フリスビー(¥48,000)だけは、ペアを持たない一本です。340mmのラウンド・フラットタイプ、グロスブラック、素材はドライカーボン、450g。ディープディッシュのように手前へ出てこない、いちばん素直な形で、純正の位置関係を大きく崩したくない方に向いています。ほかの形や仕上げも含めた並びは、ステアリングホイールの一覧でご覧いただけます。

選ぶ順番を決めてしまうと、迷わない

ご相談をいただくとき、私たちがいつもお願いしているのが、決める順番を先に固定してしまうことです。素材から入ると、たいてい遠回りになります。

  1. まず、サイズと形。径が何mmか、D型かラウンドか、ディープかフラットか。ここは運転姿勢、膝との距離、メーターの見え方に直接効きます。素材では取り返しがつかない部分です。
  2. 次に、仕上げ。グロスかマットか。日差しの反射、手の脂の出方、汚れの見え方が変わります。毎日の見え方を決めるのはここです。
  3. 最後に、柄。織り目かマーブルか。ここで初めて、ドライかフォージドかという素材の名前が出てきます。

この順番を勧める理由は単純で、1番と2番は毎日の運転に効き、3番は好みだからです。逆から決めると、気に入った柄を選ぶために合わない形を受け入れることになる。そして形の違和感は、握るたびに顔を出します。柄の違和感は一週間で慣れますが、形の違和感は慣れません。

先ほどの表でペアが組まれているのは、この順番で選べるようにするためです。1番と2番を決めた時点で候補が二本まで絞られ、最後に柄だけを見比べればいい。もし候補が一本しか残らなかったのなら、それはサイズと形の条件が厳しかったということで、素材で悩む必要はありません。条件を満たす形が先にあって、素材はその形に付いてくる——それでまったく構わない、と私たちは考えています。

まとめ

ドライカーボンとフォージドカーボンの違いを、選ぶときに効く順に並べ直します。

私たちが図面を引くときも、素材を先に決めることはまずありません。どんな姿勢で、どこを握って、どの向きに力が入るのか。それが決まってから、その形をいちばん素直に作れる方法を選びます。素材は結論であって、出発点ではない。選ぶ側に立ったときも、同じ順番がそのまま使えます。

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