ボスとPCDが分からない|6穴70mm・74mmの測り方と、ボス選びで詰まる場所

気に入った社外ステアリングが届いて、箱を開けて、そのまま車に持っていく。ところが、付きません。ステアリングの裏を見ても、シャフトに嵌るような形はどこにもなく、ボルトの穴が6つ、円を描いて並んでいるだけ。手元にあるのは輪だけで、車と繋がる部分が丸ごと足りない——これが、初めてのステアリング交換でいちばん多い足止めです。
もう一つ多いのが、ボスまで買ったのに穴が合わないという話です。6つの穴の位置が、わずかにずれている。ボルトを1本入れると、残りの5本が入らない。このとき問題になっているのがPCDという寸法で、主流の2つの規格の差はたった4mmです。4mmは、並べて見ても分かりません。だから、目で見ずに測る手順が要ります。
この記事では、PCDという図面用語を「円と穴」の話として言い換えたうえで、6穴の70mmと74mmを見分ける具体的な測り方、ボスとステアリングという部品構成の考え方、そして寸法が合っていても詰まりやすい2か所を説明します。買う前の30分で、ほとんどの失敗は避けられます。
ステアリングは買えたのに、車に付かない
なぜ輪だけでは付かないのか。ここは車の側の事情を知ると一気に腑に落ちます。ステアリングシャフトの先端には、細かい溝が放射状に刻まれています。スプラインと呼ばれる形で、この溝と噛み合うことで回転の力が確実に伝わります。溝の数と径は車種ごとに違い、共通規格ではありません。
一方、社外ステアリングの裏側にあるのは、ボルト穴が6つ並んだ平らな面だけです。世界中の車のスプライン形状に一つずつ対応していたら、ステアリングメーカーは車種の数だけ製品を作ることになります。そこで、車ごとに違う部分を別部品に切り出したのがボス(ハブボス)です。ボスの片側はスプラインに噛み合う車種専用の形、もう片側は6つのボルト穴という共通の形。この2面性が、ステアリングまわりの部品構成のすべてです。
PCDとは何か——穴の中心が乗っている円の直径
PCDはPitch Circle Diameterの略で、日本語にすると「穴の中心が並んでいる円の直径」です。6つの穴の中心を通るように円を一つ描いてみてください。その円の直径がPCDです。社外ステアリングでは70mmと74mmが主流で、当店のステアリングホイールは、ボルトパターンがすべて70mm PCDです。
たとえば375mm径のクラシックな丸型、W07 ゴッドファーザー(¥32,000)は、グロスブラックのグリップにシルバーのアクセントを入れたフラットタイプで、ボルトパターンは70mm PCDの6穴です。写真で中心のプレートを見ると、ボルト穴が円周上に等間隔で並んでいるのが分かります。この円の直径が70mm、と覚えておけば、あとは測るだけの話になります。
ホイールのPCDを知っている方なら話は早いのですが、数字の桁が違うだけで考え方は同じです。ただし、ホイールのPCDは100mmと114.3mmのように差が大きい一方、ステアリングは70mmと74mmで差が4mm。並べても見分けはつきません。「たぶん70だと思う」で買わない、というのがこの記事のいちばんの主張です。
6穴70mmと74mm、どちらかを見分ける手順
手元にあるのが定規かノギスかで、やりやすい測り方が変わります。順に挙げます。
手順1:向かい合う2つの穴を測る。6穴は等間隔に並んでいるので、必ず正反対の位置に相手の穴があります。この2つの穴の中心を結んだ距離が、そのままPCDです。70mmか74mmか、直接読めます。
手順2:中心が測りにくいときは、同じ側の端から端まで測る。穴の中心に定規を当てるのは難しいのですが、「左の穴の左端」から「右の穴の左端」までを測れば、それが中心間距離と同じになります。穴の径を足したり引いたりする必要がありません。現場でよく使う測り方です。
手順3:対角が測れないときは、隣り合う穴で測る。6つの穴が等間隔に並ぶとき、隣り合う穴の中心間距離は、PCDのちょうど半分になります。幾何学的にそうなる、というだけの話です。つまり、隣どうしが35mmならPCD70mm、37mmならPCD74mm。2mmの差なので、ノギスがあると確実です。
| 測る場所 | PCD 70mmのとき | PCD 74mmのとき |
|---|---|---|
| 向かい合う穴の中心間(対角) | 70mm | 74mm |
| 隣り合う穴の中心間 | 35mm | 37mm |
| 同じ側の端から端まで(対角) | 70mm | 74mm |
測るときのコツを2つ。1つ目は、穴の縁の面取りに惑わされないこと。ボルト穴の入口はたいてい斜めに削られていて、どこまでが穴なのかが曖昧に見えます。面取りの外側ではなく、穴として真っ直ぐになっている部分を穴の縁と考えてください。2つ目は、定規やノギスを穴の並びに対して真っ直ぐ当てること。少し斜めに当てるだけで、実際より長い値が出ます。3回測って同じ値が出たら、それが答えです。
最後に、いちばん確実な方法も書いておきます。ステアリングとボスの、それぞれの商品ページや説明書に書かれた表示を突き合わせることです。測るのは、表示が見つからない中古品や、手元の既存部品を確かめたいときのための手段だと考えてください。新品を買い揃えるなら、まず表示を読む。それだけで、この記事の測り方は出番がなくなります。
ボスは「車種の部品」、ステアリングは「規格の部品」
ここまでを一文にまとめると、ステアリングは規格の部品、ボスは車種の部品です。この区別を頭に入れておくと、選ぶ順番が自然に決まります。ステアリングは「PCD70mmの製品群」という棚から選べますが、ボスは「自分の車の棚」にしか存在しません。棚の狭いほうから先に決める。買う順番はボスが先、というのはそういう意味です。この区別は乗り換えのときにも効いてきて、車を替えても輪の側は持って行けるのに、ボスだけは買い直しになります。持ち越せる部品と買い替える部品の線引きは車を乗り換えたら、ステアリングは持って行けるかで整理しました。
順番を守る実務上の利点は、ボスが存在しない車種を早い段階で発見できることです。生産台数の少ない車や、年式が新しくボスの設定がまだない車では、ステアリングを先に買うと行き場を失います。クラシックカーの場合も同様で、ボスの入手性が交換計画の前提になります。旧車の内装づくりについてはクラシックカーとウッドステアリングにまとめています。
GT86/BRZのように、ボスが用意されている車の楽さ
逆に、ボスが整っている車は本当に楽です。当店のP17 ステアリングボス(GT86 / BRZ用)PCD 70mm(¥9,800)は、トヨタGT86/スバルBRZ専用に設計したビレットアルミ製のボスで、航空機グレードのアルミをCNCで削り出しています。ステアリング側はPCD70mm規格に対応するので、当店のステアリングホイールはそのまま組み合わせられます。オフセットもドライビングポジションを考えて設定しています。
GT86/BRZまわりの内装の考え方はGR86/BRZ内装カスタム実践ガイドに、径やディープコーンといった選び方の基礎はステアリング交換の基礎知識に書きました。あわせて読むと、ボス選びの位置づけが立体的になります。
なお、純正ステアリングにエアバッグが内蔵されている車では、寸法の話とはまったく別の検討が必要になります。エアバッグはインフレータという火工品を含む部品で、脱着には専用の手順と知識が要ります。作業はエアバッグの取り扱いに慣れた専門店にご相談ください。
奥行きとホーン配線——寸法が合っても詰まる2か所
PCDが合ってボルトが6本入っても、そこで終わりではありません。設計の目で見ると、この先に2か所、確認しておきたい場所があります。
1か所目は奥行きです。ボスには高さがあり、ステアリングにはディッシュ(皿状の凹み)の量があります。この2つの合計だけ、リムの位置が純正より手前に来ます。手前に来ること自体は狙って使う効果ですが、行き過ぎるとウインカーレバーが遠くなったり、メーターの一部が隠れたりします。逆にフラット形状を選べば、リムはボスの高さぶんしか動きません。340mm径のフラットタイプ、W05 フリスビー(¥48,000・ドライカーボン・重量450g・PCD70mm)のような選択は、ポジションを大きく変えずに手触りと軽さだけを入れ替えたいときに向きます。
2か所目はホーンの配線です。社外ステアリングにはホーンボタンが付属しますが、これはボス側の配線と繋いで初めて機能します。ボスの構造によって端子の形や取り回しは違うので、組む前に「どの線がどこに行くか」を確認しておいてください。警音器は車に備えることが求められている装置ですから、鳴らない状態のまま走らないようにします。
| 詰まる場所 | 出る症状 | 買う前にできる確認 |
|---|---|---|
| PCDの不一致 | ボルトが1本しか入らない | 対角または隣接の距離を実測する |
| ボスの車種不適合 | シャフトに嵌らない | 車種・型式・年式でボスの設定を確認 |
| 奥行きの出過ぎ | レバーが遠い、メーターが隠れる | ボスの高さとディッシュ量を足して考える |
| ホーン配線 | ホーンが鳴らない | ボス側の端子形状と結線方法を確認 |
この2か所を越えたら、最後に取り付けの作法が2つあります。直進しているときにスポークが水平になっているか(センター出し)を確認すること、そして初回の走行のあとにボルトを増し締めすることです。どちらも数分で終わりますが、この2つを飛ばすと、あとから「なんとなく斜め」「なんとなくガタつく」が残ります。センターが出ないときに直せる角度はボスの歯数で決まる飛び飛びの値になるので、切り分けの順番は直進しているのに、ロゴが傾いているにまとめました。せっかく寸法を丁寧に合わせたのですから、最後まで丁寧に締めてください。
よくある質問
Q. PCD74mmのステアリングを70mmのボスに付けられますか?
そのままでは付きません。変換用のアダプターが用意されている場合もありますが、締結部品が一段増えることになります。当店のステアリングホイールはすべてPCD70mmなので、ボス側も70mm対応のものを選んでください。
Q. 穴の数が違うステアリングもありますか?
社外品では6穴が主流です。穴数が違うものは、ボス側の対応も含めて別の話になりますので、購入前に販売元へ確認してください。
Q. ボスは他の車から外して使い回せますか?
できません。ボスはステアリングシャフトのスプライン形状に合わせた車種専用の部品です。見た目が似ていても、溝の数や径が違えば嵌りません。
Q. 測ったら71mmでした。どちらでしょうか?
穴の縁が面取りされていたり、定規の当て方が斜めになっていたりすると、1mm前後はずれます。隣り合う穴でも測って、35mmに近ければ70mm、37mmに近ければ74mmと判断してください。それでも迷うときは、部品の表示を確認するのが確実です。
まとめ:買う順番はボスが先
ステアリング交換でつまずく人の多くは、順番を逆にしています。輪から選びたくなる気持ちはよく分かるのですが、選択肢の少ないほうから決めるのが、部品選びの基本です。
- PCDは「穴の中心が並んでいる円の直径」。社外は70mmと74mmが主流
- 向かい合う穴の中心間を測ればPCDそのもの。同じ側の端から端まででも同じ値になる
- 隣り合う穴の中心間はPCDの半分。35mmなら70mm、37mmなら74mm
- ボスは車種専用、ステアリングは規格品。だからボスから先に決める
- ボスの高さとディッシュ量を足して、リムがどれだけ手前に来るかを見積もる
- ホーンの結線方法を、組む前に確認しておく
- エアバッグ内蔵車は、寸法とは別に専門店への相談が必要
ボスとPCDが決まってしまえば、あとは形と素材を楽しむ段階です。ステアリングホイールの一覧と、ボスを含むパフォーマンスのページを並べて眺めてみてください。
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