旧車・ネオクラシックにウッドステアリングを付ける前に|375mm・細グリップ・6穴PCD70の読み方

旧車のドアを開けて運転席に座ると、最初に目に入るのはメーターでもシートでもなく、ステアリングです。車体は当時の姿に戻したのに、手元には後年に替えられた太い樹脂のリムが付いている。あるいは、90年代のネオクラシックで、純正のリムのウレタンが手の油でてかり始めている。握るたびに「ここだけ時代が違う」と感じるのに、何を選べばよいかが分からない。
通販のページを開くと、375mm、細グリップ、6穴、PCD70といった数字が並んでいます。太さを「細め」と書かれても、どのくらい細いのか。6穴とは何が6つなのか。ウッドと黒のどちらが自分の内装に合うのか。数字の意味が分からないまま注文するのは不安ですし、ボスやホーンの話になると、さらに迷います。
この記事では、往年の車の内装を資料として研究してきた設計者の立場から、クラシック系ステアリングの3つの数字(375mm・細グリップ・6穴PCD70)の読み方と、当時のステアリングがなぜ大径で細かったのかを説明します。そのうえで、細いリムが握り方をどう変えるか、木のリムと黒×シルバーのリムを内装色とどう合わせるか、ホーンボタンとボスで何を確認するか、手元の小物までを順に整理します。
樹脂のリムが時代と合わない——旧車の運転席で最初に目に入るもの
内装デザインの仕事で、往年の車の運転席を資料として何台も見てきました。1960年代から70年代の車のステアリングには、共通する特徴があります。径が大きく、リムが細く、スポーク(中心からリムへ伸びる腕)が薄い。木か、木に見える樹脂か、細い金属のリムに薄い革を巻いたもの。今の車と並べると、別の道具に見えます。
理由は単純で、当時の多くの車にはパワーステアリング(ハンドル操作を油圧や電気で補助する装置)がなかったからです。据え切りや低速での切り返しには腕の力が要り、径が大きいほど小さな力で回せます。てこの原理そのものです。細いリムは、木や金属の芯に薄い仕上げを施した当時の作り方の結果でもあり、手のひら全体で握るより、指で回す操作に向いていました。
その後、パワーステアリングが普及し、エアバッグを収めるためにハブが大きくなり、リムは太く、径は小さくなっていきます。太いリムは握力を使って握るためのもので、素材はウレタンや革になった。旧車に後年の太い樹脂リムが付いていると違和感が出るのは、この「操作の思想」が違うからです。見た目の古さではなく、手の使い方が合っていない。
クラシック系ステアリングの3つの数字:375mm・細グリップ・6穴PCD70
クラシック系のステアリングを選ぶとき、商品ページに並ぶ数字は3つに絞れます。順に読み方を説明します。
375mm——大径は「回しやすさ」の数字
375mmはリムの外径です。今のスポーツ系の社外ステアリングは340mm前後、純正はそれより大きめが多いのですが、375mmはそれよりさらに一回り大きい寸法です。大きいほど、同じ舵角を回すのに手が動く距離は長くなりますが、必要な力は小さくなります。パワーステアリングのない車や、あってもゆったり回して乗る車には、この大きさが理にかなっています。
気を付けたいのは、大径にすると、リムの上端がメーターにかかりやすくなり、下端が膝に近づくことです。今付いているステアリングの径を測って、差の半分(たとえば今が350mmなら約12mm)だけ上下に広がると考えて、メーターの見え方と膝の余裕を確かめてください。
細グリップ——太さは「握り方」を決める
細グリップは、リムの断面の太さを表す言葉です。太いリムは手のひらで包んで握力で保持するもの、細いリムは指で引っかけて回すものです。クラシック系は後者で、この握り方の違いは、表の後で改めて説明します。商品ページに具体的な太さの数字が無い場合、「スリム」「細め」という表記を、この操作思想の違いとして読んでください。
6穴PCD70——「取り付けの規格」の数字
ステアリングは、ボスと呼ばれるアダプターを介して車のコラム(ハンドル軸)に取り付けます。6穴は、ステアリングとボスを固定するボルトが6本あること。PCD70は、その6本のボルトが並ぶ円の直径が70mmであることを示します。この2つが合っていれば、ボス側が同じ規格である限りステアリングを載せ替えられます。当店のクラシック系は両方ともこの規格です。
| 数字 | 意味 | 確認すること |
|---|---|---|
| 375mm | リムの外径 | 今の径との差、メーターの見え方、膝との余裕 |
| 細グリップ | リム断面の太さ | 指で回す握り方に慣れているか |
| 6穴PCD70 | ボス側との取り付け規格 | 車種に合うボスが同じ規格で手に入るか |
径・ディープコーン・ボスの基礎はステアリング交換の基礎知識の記事に詳しく書いたので、初めてステアリングを替える人は先にそちらを読んでおくと、この記事の数字が繋がります。
細いグリップは握り方を変える(指で包む握り)
太いリムに慣れた手で細いリムを握ると、最初は頼りなく感じます。手のひらに何も当たらず、握力をかける場所がない。ここで「太いのに替えよう」と考える前に、握り方を一度変えてみてください。
細いリムの握りは、手のひらで掴むのではなく、指で包みます。親指と人差し指の付け根でリムを挟み、残りの指を軽く添える。直進では指先が触れている程度で、切るときは指の付け根でリムを引く。腕の力ではなく、指と手首で回す感覚です。往年のドライバーの写真で、リムの上に指をかけるように手を添えている姿を見たことがあるかもしれません。あれは、この握り方です。
この握り方には利点があります。握力を使わないので、長距離で腕が張りにくい。リムから伝わる路面の情報が、手のひらの厚い肉ではなく指先で受け取れる。反面、急な操作で力をかけると指が滑るので、細いリムは「ゆったり回す車」に向いています。旧車やネオクラシックの多くはこの側にあるので、相性が良いのです。
木のリムと黒×シルバーのリム、内装色との合わせ方
クラシック系のリムは、大きく分けて「木」と「黒×シルバー」の2系統があります。どちらを選ぶかは、内装の色と素材で決まります。
木のリムは、内装に茶系や生成り、あるいは金属の素地が見える車に合います。当時の木のダッシュボード、革やビニールの茶のシート、クロームのメッキ部品。この文脈に木のリムがあると、部品を足したのではなく、元からそこにあったように見えます。当店のW06 ピーチランド(¥28,000)は、天然ピーチウッドのリムを職人が一つひとつ仕上げたフラットタイプで、径375mm、高剛性アルミフレーム、PCD70の6穴、ホーンボタン付きです。木目と色合いは一本ずつ違うので、その違いも含めて選ぶものだと考えてください。在庫の状況は商品ページで確認をお願いします。
黒×シルバーのリムは、内装が黒を基調にしていて、メーターの縁やスイッチに金属の光り物がある車に合います。80年代から90年代のネオクラシックはこちらの側にあることが多く、木を入れると浮いてしまう内装でも、黒いリムにシルバーのスポークなら馴染みます。W07 ゴッドファーザー(¥32,000)は、グロスブラック(艶のある黒)のグリップにシルバーのグロスアクセントを組み合わせたクラシック フラットタイプで、径375mm、PP素材のグリップと高剛性のグロスアルミフレーム、PCD70の6穴、ホーンボタン付属。スリムなグリップは木のリムと同じ思想で、握り方も同じです。
迷ったときの判断基準は、ダッシュボードの上面と、シートの色です。ダッシュが木や茶なら木のリム、黒ならまず黒のリムから考える。シートが茶や生成りなら木、黒や灰なら黒。両方が混じる内装では、メーターの縁がクロームなら黒×シルバー、木枠なら木、という順に見ていくと決まります。ステアリングホイールの一覧で、写真を内装の色と並べて見比べてみてください。
ホーンボタンとボスの確認(法規は検査場・年式で判断が分かれる)
ここは正直に書きます。ステアリング交換で気にすべきことは、見た目より先に3つあります。
- ボスが車種に合っているか。ボスはコラム側の形状に合わせた車種専用の部品で、ステアリング側の規格(6穴PCD70)と両方が合って初めて取り付けられます。年式の違いでコラムの形が変わっている車種もあるので、車検証の型式と年式で探してください。
- ホーンが鳴る状態にできるか。当店のクラシック系にはホーンボタンが付属しますが、鳴らすためにはボス側の配線と組み合わせる必要があります。警音器は必要な装備なので、取り付け後に必ず鳴ることを確かめてください。
- エアバッグの有無。純正にエアバッグが付いている車では、社外ステアリングへの交換はエアバッグの扱いや警告灯の処理を含めて、保安基準への適合をどう確認するかが問題になります。この記事で扱う旧車の多くはエアバッグのない年式ですが、ネオクラシックには付いている車もあるので、先に確かめてください。
車検に通るかどうかは、検査場や年式で判断が分かれます。「必ず通る」とも「通らない」とも、ここでは書きません。当店として言えるのは、取り付け前に運輸支局か信頼できる専門店に、車種と年式を伝えて確認してほしい、ということだけです。ステアリングは毎日握る部品であると同時に、安全に直接関わる部品でもあります。
手元をそろえる:羊革のハーフフィンガーとサンダルウッドのノブ
細いリムに替えると、次に気になるのは手袋とシフトノブです。指で回す握りは、指先の感覚が命なので、手袋も指先が出るものが向いています。
G19 クラシック・ラム(ブラウン/羊革/ハーフフィンガー/ハンドメイド)(¥7,800)は、天然のシープスキン(羊革)を職人が縫ったハーフフィンガー(指先が出る半指)のグローブで、色はアンティーク感のあるブラウン、サイズはSmall・Medium・Largeの3種類。羊革は薄くて柔らかく、細いリムに指を添える握りで、革越しにリムの形が分かります。木のリムには茶の革がそのまま繋がりますし、黒×シルバーのリムに茶の手袋を合わせるのも、往年の写真によくある組み合わせです。手囲いの測り方と、やや大きめの作りである点は商品ページに書いています。
シフトノブは、木のリムを選んだなら木で揃えるのが素直です。S06 サンダルウッドボール(茶)(¥5,800)は、アルミ合金と天然のサンダルウッド(白檀)を組み合わせたボール型で、重さは110g。ステアリングのリムとノブ、二つの木が同じ視界に入ると、内装の「時代」が揃います。ネジ径は型式・年式・ミッションで変わるので、純正ノブを外してレバー側の外径を測ってください。当店のノブは付属アダプターでM8×P1.25/M10×P1.25/M10×P1.50/M12×P1.25の4種類に対応し、差し込むだけで取り付けられます。
私たち設計者が自分の車で何をしているかはカーデザイナーは愛車に何をするかの記事に書きました。手元の部品を揃えるとき、素材の数を増やさないという規律は、旧車でも変わりません。
よくある質問
375mmは、今の車に付けると大きすぎませんか?
パワーステアリングのある車では、回す力の面では必要以上の大きさになります。ただ、クラシック系のステアリングを選ぶ目的は操作の軽さより雰囲気と握り方の再現なので、径の大きさそのものは問題になりません。確かめるべきは、メーターの見え方と膝との余裕です。
細いリムに慣れるまでどのくらいかかりますか?
握り方を「手のひらで掴む」から「指で包む」に変えれば、多くの人は数回の運転で馴染みます。逆に、太いリムと同じ握り方のまま使い続けると、いつまでも頼りなく感じます。
ウッドのリムは手入れが必要ですか?
日常は乾いた柔らかい布で拭くだけで十分です。濡れた手で長時間握ったり、直射日光の下に放置したりする時間を減らすと、木の艶が長く続きます。
ホーンボタンは付属しますか?
W06 ピーチランド、W07 ゴッドファーザーともにホーンボタンが付属します。鳴らすためには、車種に合ったボス側の配線と組み合わせる必要があります。
まとめ
クラシック系ステアリングは、3つの数字を読めれば選べます。
- 375mm:大径は回しやすさの数字。メーターの見え方と膝の余裕を確かめる
- 細グリップ:指で包んで回す握り方に変える。腕ではなく指と手首
- 6穴PCD70:ボス側との取り付け規格。車種・年式に合うボスを先に探す
- 木のリムはダッシュとシートが茶・生成りの内装に、黒×シルバーは黒基調の内装に
- ボス・ホーン・エアバッグの3点を取り付け前に確認し、車検の可否は検査場や専門店に相談する
- 手元は羊革のハーフフィンガーと木のノブで、素材を増やさずに揃える
まず、今のステアリングの径を測るところから始めてください。差の半分だけ上下に広がる、と想像すれば、375mmが自分の車に載るかどうかは、注文する前に分かります。
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