フットプレートは、どこに置くと踏みやすいか|位置決めと、固定の考え方

届いたアルミのプレートを持って運転席のドアを開け、床にあてがったまま、10分ほど動けなくなっていました。左足の横あたりに置いてみる。少し前に出してみる。手前に引いてみる。どこに置いてもそれらしく見えるし、どこに置いても何かが違う気がする。両面テープの台紙にはまだ手を掛けていません。一度貼ってしまえば、やり直すのが億劫になることだけは分かっているからです。
説明書のようなものを探しても、汎用のプレートに「この車種はここ」という指定はありません。当たり前で、床の形も、シートの位置も、乗る人の脚の長さも、全部違うからです。正しい位置は製品側ではなく、乗る人の側にある。頭では分かっているのですが、では自分の正解をどうやって見つけるのかというと、その手順がどこにも書かれていない。固まっていた10分は、そういう10分でした。
この記事では、フットプレートの位置をどう決め、どう固定するかを順番に整理します。寸法の話は最小限にします。代わりに、座った状態で印を付ける、仮止めして一週間乗る、それから本固定するという三段階の手順を中心に置きます。これは量産の開発で試作部品を実車評価するときの流れそのもので、個人の作業にもそのまま翻訳できます。最後に、狭くて暗い足元で作業するための環境づくりにも触れます。
位置を決めるのは道具ではなく、自分の足である
フットプレート——いわゆるフットレスト、左足を置くための板——の取り付けで最初に手が止まるのは、たいてい「基準がない」からです。ネジ穴が決まっている部品なら迷いようがありませんが、汎用のプレートは床のどこにでも置けてしまいます。選択肢が多いことが、そのまま迷いになります。
そこで、基準を製品ではなく自分の身体に移します。左足が、力を抜いたときに自然に落ちる場所。これが起点です。左足の役割は車によって少し違って、マニュアル車ならクラッチを踏んでいないときの待機場所、オートマチック車なら常時の休息場所、そして両方に共通して、強くブレーキを踏むときや横方向の力がかかるときに身体を支える踏ん張り場所になります。
この「自然に落ちる場所」は、シートの位置が決まって初めて確定します。逆に言えば、シートポジションが決まっていない状態で位置決めをすると、必ずやり直しになります。普段の運転姿勢を作る。靴を履く。それから決める。順番はここだけ守ってください。左足そのものの役割については左足が滑る、という違和感の正体で書いていますので、そもそもなぜ板が要るのかから知りたい方はそちらを先にどうぞ。
座ってから決める——シートを合わせた状態で印を付ける
具体的な手順です。ここは道具もほとんど要りません。マスキングテープと油性ペンがあれば足ります。
- 普段どおりの運転姿勢を作る。シートの前後、背もたれの角度、ハンドルの位置まで、いつも走っている状態に戻します
- いつも運転する靴を履いて座る。裸足やスリッパで決めると、靴底の厚みぶんだけずれます
- 左足の力を抜いて、自然に落ちた場所で止める。探しにいかないことが大事です。「置きにいった場所」ではなく「落ちた場所」を見ます
- その位置で、かかとの後ろとつま先の前にマスキングテープを貼る。足の幅の左右にも一本ずつ貼れば、四辺が決まります
- 一度降りて、外から見る。座っているときの視界では、床は正確に見えません。降りて上から確認すると、思っていたより内側だった、というようなずれが見えます
この印が、プレートの置き場所の第一候補になります。当店のA03 アルミ フットプレート(¥4,800)はサイズが280mm×160mm、厚みが2mmです。テープで囲った範囲がこれより明らかに小さいなら、プレートの一部が使われないことになります。逆に大きくはみ出すなら、足の置き方が一定していない可能性がある。この段階で、寸法と自分の足の当たり方が噛み合っているかを見ておきます。
ひとつ注意点を。マスキングテープを貼る先がフロアマットの上なら、マットがずれた瞬間に印もずれます。可能ならマットをめくって、下地の上で印を付けたほうが再現性は高くなります。そのうえで、最終的にマットの上に載せるのか、マットに固定するのか、下地まで届かせるのかを決めます。
高さと角度——かかとが浮かないかを先に確かめる
位置が決まったら、次は高さと角度です。プレートを敷くということは、その厚みのぶんだけ左足の面が持ち上がるということです。A03の厚みは2mmですから、板そのものは薄い部類です。ただ、下に緩衝材や下地を噛ませると、高さは簡単に変わります。
確かめる項目はひとつだけで十分です。プレートに足を載せて力を入れたとき、かかとが床から浮かないか。浮くということは、足首から先だけで体重を支えている状態です。短時間なら気になりませんが、長距離では確実に疲れが出ます。かかとが床に残ったまま、土踏まずから母指球のあたりがプレートに載る。この当たり方が、いちばん楽な形です。
角度も同じ考え方で見ます。膝が伸びきる位置に板を置くと、踏ん張ったときに力が逃げます。膝が少し曲がった状態で足の裏が板に当たっている。そこを目指してください。靴底の形や厚みでこの感覚はかなり変わるので、履き替える機会が多い方は靴底とフットプレートの相性も見ておくと、判断がぶれにくくなります。
仮止めして一週間乗る——ここを飛ばすと二度手間になる
ここが、この記事でいちばん伝えたい工程です。本固定の前に、一週間ふつうに乗ってください。
量産の開発でも、試作部品をいきなり本組みすることはありません。仮の状態で実車に載せ、決めた評価項目を実際の使用条件で確認し、駄目なら直してもう一度回します。理由は単純で、止まっている車の中で気づけることと、走っている車の中で気づけることが違うからです。フットプレートも同じで、静かなガレージでちょうどいいと思った位置が、疲れて帰る夜の高速道路では微妙に遠い、ということが普通に起こります。
仮止めは、あとで剥がせる方法にしてください。弱めの両面テープを数か所だけ、あるいはマットに養生テープで留める程度で十分です。そのうえで、次の場面を意識して乗ります。
| 確認する場面 | 見るところ | 合っていないときの直し方 |
|---|---|---|
| クラッチを踏み切る(マニュアル車) | 左足がプレートから離れて、ペダルまで無理なく届くか | プレートが前すぎる。数センチ手前へ寄せる |
| 左足を休ませて巡航する | かかとが床に残ったまま、土踏まずが載っているか | 高さか角度。位置をわずかに手前・内側へ |
| 強くブレーキを踏む | 左足で踏ん張れるか。体が前へ流れないか | 遠すぎる。膝が伸びきらない位置に |
| 乗り降りする | 靴のかかとや裾がプレートの角に引っかからないか | 角の向きを変える、もしくは内側へずらす |
| 雨の日に乗る | 濡れた靴底で滑らないか | 滑り止めの面の汚れを落とす。泥が詰まると効きが落ちる |
| 厚底・薄底の靴で乗る | どちらでも当たり方が破綻しないか | よく履くほうに合わせる。両立しないなら位置を中庸に |
一週間のあいだに一度でも「ここが違う」と感じたら、その場でテープを剥がして数センチ動かします。仮止めのうちは、動かすことにコストがかかりません。この気軽さこそが、仮止め期間の価値です。本固定してしまうと、同じ違和感を「まあ、慣れるだろう」と流すようになります。
固定の考え方——動かない、干渉しない、外せる
位置が確定したら、本固定です。固定方法は車種と床の構造でまったく変わるので、ここでは満たすべき条件のほうを挙げます。順番にも意味があります。
- ペダルに干渉しないこと。これが最優先で、他のすべてに優先します。プレート本体はもちろん、留めるための部品、はみ出したテープ、めくれたマットの端まで含めて、ペダルの動く範囲に何も入らないこと。少しでも怪しいなら、その固定方法は採用しない
- 踏んでも動かないこと。踏んだ拍子にプレートが滑ったり回ったりするのは、板がないより危険です。前後だけでなく、左右と回転方向にも動かないかを確認します
- 外せること。いつか元に戻す日が来ます。乗り換えのときも、内装を張り替えるときもです。穴を開ける固定は確実ですが、戻せません。戻せる方法で必要な保持力が出せるなら、そちらを選んでおくほうが後々ありがたい
A03は汎用設計です。商品説明にも「汎用設計のため、装着には車種に応じた加工が必要な場合があります」と書いてあるとおりで、純正のフットレストが付いている車、床が平らな車、傾斜が強い車で、必要な工夫はそれぞれ違います。表面には滑り止めが備わっていますが、それは足と板のあいだの話で、板と床のあいだの固定は別に用意する必要があります。この二つを混同しないでください。
足元は運転操作に直結する場所です。固定方法に少しでも不安が残るなら、無理に自分で決めず、整備工場に相談してください。当店としても、取り付け位置や固定方法について「これなら必ず大丈夫」と書くことはできません。判断の材料をお渡しするところまでが、私たちの役割だと考えています。内装まわりの小物はその他アクセサリーのコレクションにまとめています。
作業しやすい環境を先に作る
最後に、地味ですが効く話を。運転席の足元は、車内でいちばん作業しづらい場所です。狭く、暗く、姿勢が悪い。ここで小さなネジを落とすと、探すだけで15分が消えます。
作業を始める前に、次の四つを用意しておくだけで、かかる時間も仕上がりも変わります。ひとつ、明るさ。天井灯だけでは足元まで届かないので、頭に付ける明かりか、置ける明かりを足します。ふたつ、姿勢。シートを目一杯後ろへ下げ、ハンドルが上下するなら上げておく。乗り込む口が広がるだけで、腰への負担がまるで違います。みっつ、膝の置き場。ドアの外の地面に膝を突く時間が長くなるので、たたんだ毛布かクッションを敷いておく。よっつ、部品を置く場所。取り外したものを載せる皿や布を、床ではなく助手席側に用意します。
手を保護するものもあった方がいいです。足元の作業では、シートレールの端や内装の金具など、思わぬところに鋭い部分があります。当店のG21 work 3セット(¥990)は素材がコットンとラバー、カラーはブラック、フリーサイズで3セット入りの作業用グローブです。指先に滑り止めのラバーが付いているので、小さなネジをつまむ作業でも手袋のまま進められます。グローブ類はグローブのコレクションにまとまっています。
作業環境の作り方そのものは、ステアリング交換の記事でもう少し細かく書きました。共通する部分が多いので、ステアリング交換の道具と作業環境も参考になるはずです。
まとめ:取り付け前に済ませておく確認
フットプレートの取り付けは、貼る作業そのものより、貼る前に決めることのほうが長くかかります。ですが、その順番でやったほうが結果的に早く終わります。
- シートポジションを先に確定する。普段の姿勢、普段の靴。ここが動くと、位置決めのやり直しになる
- 左足が「落ちる」場所に印を付ける。探しにいった場所ではなく、力を抜いて落ちた場所を見る。降りて上からも確認する
- かかとが浮かないかを確かめる。足首から先だけで支える形になっていないか。膝が伸びきる位置になっていないか
- 仮止めで一週間乗る。夜、雨、長距離、違う靴。違和感が出たらその場で数センチ動かす
- ペダルへの干渉を最優先で確認する。板本体だけでなく、留め具・テープ・マットの端まで含めて見る
- 外せる固定を優先する。穴を開ける前に、戻せる方法で保持力が足りないかを一度考える
- 作業環境を先に作る。明かり、姿勢、膝の下、部品の置き場、手袋(G21 work 3セット ¥990)
足元は、走っているあいだずっと身体が接している場所です。数センチの違いが、長距離のあとの疲れ方として返ってきます。一週間かける価値のある数センチだと思います。
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