何ミリ上げればいいかは、シートの座り方で決まる|背もたれを立てる人と、寝かせる人

同じ型式の車に乗る二人が、同じ身長で、片方は「ショートでちょうどよかった」と言い、もう片方は「ロングでもまだ足りない」と言う。エクステンションのサイズ選びをお手伝いしていると、こういう食い違いに何度も出会います。車が同じ、身長も同じ。なのに必要な高さが二段も違う。
ショート・ミディアム・ロングのどれを選べばいいですか、という質問に、私たちが車種と身長だけでは答えられないのはこのためです。答えを決めているのは、身長ではなく座り方です。もっと言えば、背もたれをどのくらい起こしているか。ここが決まらないと、必要な高さは計算できません。私たちが量産車でシートとペダル、シフターの位置関係を詰めるときも、まずシートバックの角度を決めてから、手が届く範囲を描きます。順番が逆になることはありません。
この記事では、なぜ身長より座り方が効くのか、自分の車に座ったまま必要量を確かめる三手順、背もたれを寝かせる人ほど高さが要る理由、高くしすぎたときに起きること、そして迷ったときの選び方をお話しします。最後に、長さの話とネジ径の話は別問題であることも確認しておきます。
身長ではなく、肩がどこにあるかで決まる
シフト操作で動いているのは、肩から先です。肘を支点に前腕を振り、手首と指でノブをつかむ。この動きの起点は肩の位置なので、必要な高さを決めているのは肩がどこにあるかです。
ところが、肩の位置は身長では決まりません。同じ身長でも、座高が高い人と低い人がいます。座面の高さをどこに合わせているかでも変わります。そしていちばん効くのが、背もたれの角度です。背もたれを一度寝かせるごとに、肩は後ろへ、そして下へ移動します。シフトノブは動きませんから、肩からノブまでの距離はそのぶん遠くなります。
理想の状態を先に言葉にしておきます。シフト操作は、「肩をシートバックにつけたまま、肘が軽く曲がった状態で、前腕と手首だけで完結する」のがいちばん疲れません。これはシフトエクステンションの効果とサイズ選びでも書いた基準です。逆に、肩がシートから浮く、脇が開く、上体が前へ倒れる。これらが出ていれば、ノブが遠いか低いかのどちらかです。
身長が当てにならない理由を、もう少し具体的に言っておきます。上半身と下半身の比率は人によって違います。同じ身長でも脚が長い方は、ペダルに合わせて座ると座面の前後位置が後ろになり、そのぶん肩も後ろへ下がります。逆に上半身が長い方は、ペダル位置を合わせても肩が前寄りに残る。この二人が同じ車に乗れば、シフトノブとの距離は当然違ってきます。カタログの身長目安では、この差は拾えません。
ですから、必要な高さは「あなたの車の、あなたの座り方における、肩とノブの位置関係」から出てきます。他人の答えは参考になりません。幸い、これは自分で測れます。
座ったまま確かめる三手順
用意するものは、定規かメジャーが一本だけです。エンジンは止め、駐車状態で行ってください。
- いつもの姿勢を作る。ステアリングを持ち、背中とお尻をシートに預けます。ここで姿勢を作り込みすぎないこと。普段のとおりに座ります。背もたれの角度、座面の高さ、前後位置は、いつもの設定のままにしてください。
- 肩を離さずに、手を「ちょうどいい位置」に置く。肩をシートバックにつけたまま、肘を軽く曲げて、シフト操作をするつもりで手を差し出します。力を抜いて、自然に止まったところが、あなたにとって無理のない手の高さです。この位置で手を止めたまま、指先の下端がどこにあるかを覚えます。
- ノブの天面までの差を測る。その手の位置から、いま付いているシフトノブの天面までの垂直距離を測ります。手のほうが上にあれば、その差が「足りない高さ」です。同じか手のほうが低ければ、高さは足りています。
この差が、必要な延長量のおおよその見当になります。差がごくわずかなら、ポジションの微修正で足ります。指が何本も入るほど開いているなら、それなりの延長量が要ります。数値をここに書かないのは、シートの形も座り方も人それぞれで、一般化した数字がかえって判断を狂わせるからです。自分の車で出た差を、自分の基準にしてください。
もうひとつ、測るタイミングにも触れておきます。朝いちばんの姿勢と、二時間走ったあとの姿勢は違います。長距離を走る方は、疲れて背もたれに沈み込んだ状態でもう一度測ってみてください。そのときの差のほうが、実際に効いてくる場面が多いはずです。
背もたれを寝かせる人ほど、高さが要る
手順を実際にやってみると、傾向がはっきり出ます。背もたれを立てて座る方は差が小さく、寝かせて座る方は差が大きい。理由は幾何学的です。
| 座り方 | 肩の位置 | 手を出したときの高さ | 必要な延長量の傾向 |
|---|---|---|---|
| 背もたれを立てて座る | 前寄り・高い | ノブに近い高さで自然に止まる | 小さい。ショートで足りることが多い |
| 標準的な角度 | 中間 | やや高い位置で止まる | 中くらい。ミディアムが収まりやすい |
| 背もたれを寝かせて座る | 後ろ寄り・低い | かなり高い位置で止まる | 大きい。ロングが視野に入る |
背もたれを寝かせると肩は下がるのに、なぜ手は高い位置で止まるのか。肩が後ろへ下がると、腕を前に伸ばしたときの手の到達点も後ろへ移ります。ノブに届かせるには腕を前へ伸ばすことになり、伸ばした腕は自然と水平に近づく。その結果、肩をシートにつけたまま楽に止まる手の高さは、低いノブより上にきます。ここでノブへ手を下ろせば、肩がシートから離れます。これが「肩が浮く」の中身です。
フルバケットシートに換えた方や、シートレールで着座位置を下げた方に延長の需要が集中するのも、同じ理屈です。着座位置が下がった量だけ、肩とノブの関係が変わっています。
とはいえ、傾向はあくまで傾向です。背もたれを寝かせていても、座面を高くしている方なら差は小さくなります。表は当たりをつけるためのもので、最後は前章の三手順で確かめてください。
逆に、高くしすぎると起きること
足りないことばかり書きましたが、多すぎる側にも症状があります。しかもこちらは、付けた直後には気づきにくい。
- 腕が浮く。ノブが高すぎると、前腕を支えるものがなくなります。シフトしていない時間も腕を宙に保つことになり、長距離でじわじわ効いてきます。
- 肩が上がる。届かせるために肩をすくめる姿勢になります。首から肩にかけての張りとして出るので、原因がシフトノブだと気づきにくい症状です。
- 視線が動く。ノブが高くなるぶん視界に入りやすくなり、操作のたびに視線が下がる方がいます。慣れれば戻りますが、最初のうちは意識しておいてください。
- ストロークが伸びる。てこの腕が延びるので、手が動く距離は長くなります。とくにゲートの端にあるギアで、遠く感じやすくなります。この症状は1速とバックが遠く感じる|支点が動くと、ゲートの当たりはどう変わるかで詳しく扱っています。
付け加えると、これらは付けた当日には出にくい症状です。ポジションが変わった当初は、新しさのほうが先に立ちます。腕の浮きや肩の張りは、二週間ほど乗り込んで、その姿勢が日常になってから顔を出します。ですから評価は、通勤や買い物といった普段の使い方をひととおり回してから下してください。
この四つは、いずれも「効きすぎ」の裏返しです。ポジションが改善した実感より先にこれらが出るなら、その高さは自分の車には多いということになります。
迷ったら短いほうから——重ねられないぶん、戻しやすさで選ぶ
選び方の原則をひとつだけ挙げるなら、迷ったら短いほうから、です。理由は単純で、足りなければ一段上げればいいけれど、多すぎた場合の不快は毎回の運転についてまわるからです。
最初の一本として収まりやすいのがE08 ミディアムエクステンション(M18 x 1.5)(¥4,800)です。延長側のネジはM18×1.5、車両への取り付けは内蔵の六角ネジで固定し、シフトレバー径8mm〜14mmに対応します。ポジション改善の効果と、剛性感・ストロークの変化のバランスが取りやすいサイズです。
三手順で出た差がごくわずかだった方、あるいは今の操作感をできるだけ変えたくない方にはE04 ショートエクステンション(M18 x 1.5)(¥4,800)を。こちらも延長側M18×1.5、内蔵の六角ネジで固定し、シフトレバー径は8/9.5/10/12mmに対応します。
背もたれを深く寝かせて座る方、着座位置を大きく下げた車の方はE06 ロングエクステンション(M18 x 1.5)(¥4,800)が候補です。延長側はM18×1.5、車両側はM8×1.25/M10×1.25/M12×1.25に対応します。ただしレバーが長くなるほど先端は振られやすくなるので、載せるノブは軽めのほうが有利です。この関係はロングネックのノブとエクステンションの使い分けで整理しています。
もうひとつ、一台を二人で乗る場合の話をしておきます。座り方が違う二人なら、必要な高さも違います。片方に合わせれば、もう片方には多すぎるか足りないかになる。この場合は短いほうの人に合わせて、もう一方が慣れるのが現実的です。共用時の考え方は一台を二人で乗るときのシフトノブにまとめました。
M12とM18の違いは、長さ選びとは別の問題
最後に、混同されやすい点を整理します。当店のエクステンションには、同じ長さでもM12×1.5とM18×1.5の二種類があります。これは長さの話ではなく、上に載せるノブ側のネジ規格の話です。
選び方は単純で、載せたいシフトノブのネジに合わせます。当店のシフトノブは本体ネジがM18×P1.5のものが中心で、その場合はM18×1.5のエクステンションにそのまま載せられます(一部にM12×P1.25のノブもありますので、商品ページの表記をご確認ください)。M12規格の社外ノブを載せたい方が、M12×1.5を選ぶ——という関係です。長さの判断とは完全に独立しているので、先に長さを決め、あとからネジ径を合わせて構いません。
そして、車両側のネジ径はメーカーでは決まりません。同じ車種でも型式・年式・ミッションによって変わります。確定しているのはマツダ車のM12×P1.25だけです。必ず純正ノブを外して、レバー側の外径を実際に測ってください(M8=約8mm/M10=約10mm/M12=約12mm)。当店のシフトノブは付属アダプターでM8×P1.25/M10×P1.25/M10×P1.50/M12×P1.25の4種に対応します。長さとネジ径の組み合わせはエクステンションのコレクションで並べて見られます。合わせるノブはシフトノブのコレクションからどうぞ。
まとめ
必要な高さは、車種でも身長でもなく、あなたの座り方が決めています。座ったまま測れますから、買う前に一度やってみてください。
- 効いているのは肩の位置。背もたれの角度が変われば、肩とノブの距離が変わる
- 三手順で測る。いつもの姿勢を作る/肩を離さず手を自然に止める/その高さとノブ天面の差を測る
- 背もたれを寝かせる人ほど差は大きい。立てて座る人はショートで足りることが多い
- 高すぎると、腕が浮く・肩が上がる・視線が動く・ストロークが伸びる
- 迷ったら短いほうから。足りなければ一段上げられるが、多すぎる不快は毎回ついてくる
- 長さを決めてから、載せるノブに合わせてM12かM18かを選ぶ。順番を混ぜない
- 車両側のネジ径はメーカーでは決まらない。レバー側の外径を実測する
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