シーズンオフのグローブをどう仕舞うか|車内に置きっぱなしで起きること

秋の終わりに、久しぶりにドアポケットへ手を入れて、そこにグローブがあることを思い出す。取り出してみると、革がわずかに硬い。指を通すと、以前より肘寄りの部分がこわばっていて、握ると乾いた音がする。夏のあいだずっとそこにあったのだと、そこでようやく気づきます。
あるいは、逆のパターンもあります。オフシーズンに入る前に、きちんと洗って、袋に入れて、玄関の収納にしまっておいた。半年後に取り出したら、袋の内側が曇っていて、革の表面に白っぽいものが浮いている。丁寧にやったつもりが、かえって悪くしていた——。
この記事では、使わない時期のドライビンググローブをどう仕舞うかを整理します。車内という環境が革にとってどれだけ厳しいのか、しまう前に必要な時間、形を殺さない置き方、密閉していい場合と悪い場合。そして、次のシーズンに最初に触ったときに何を確かめるか。革が傷むのは使うからではなく、使わない時間の置き方で決まる、という話です。
ドアポケットに入れたまま、夏を越していないか
まず、いちばん多い置き場所から。運転席のドアポケット、センターコンソールの中、ダッシュボードの上。どれも「次に乗るときすぐ使える」場所で、シーズン中はこれで正解です。問題は、シーズンが終わったあともそのままになることです。
手袋は、財布や鍵と違って、使わなくなったことに気づきにくい持ち物です。毎日目に入るのに、意識には上がらない。気づいたときには、半年そこにいた——というのが典型的な経過です。
設計の仕事をしていると、部品の劣化には二種類あることに嫌でも詳しくなります。動かして減るものと、置かれて劣化するものです。革は、後者の割合が大きい素材です。使わずに置いておけば長持ちする、という直感は、革に関しては当てになりません。
車内は、革にとってかなり厳しい環境
では、車内の何が厳しいのか。三つあります。
熱
閉め切った車内は、外気温より大きく上がります。直射日光の当たるダッシュボードの上は、さらにその上をいきます。革は、熱そのもので即座に壊れるわけではありませんが、内部の油分が抜けやすくなります。油分が抜けた革は、しなやかさを失って硬くなり、曲げたところから細かいひび割れが出ます。
紫外線
フロントガラス越しの日差しは、思っているより長い時間、同じ場所に当たり続けます。色が抜けるのはもちろんですが、それ以上に効くのが表面の仕上げの劣化です。仕上げが痩せると、その下の革が直接ダメージを受けるようになります。
湿度の上下
これがいちばん見落とされます。車内は、朝と昼で湿度が大きく振れる場所です。夜のうちに結露し、日が昇ると一気に乾く。この上下を毎日繰り返すと、革の繊維は膨らんだり縮んだりを続けることになります。金属の疲労と同じで、同じ方向にゆっくり進むより、往復するほうが早く傷みます。
この三つは、どれも革そのものを攻撃するというより、革の中の油分と水分の釣り合いを崩す方向に働きます。革は、繊維のあいだに油分と水分を含んで、はじめてしなやかに動きます。どちらかが偏れば、動きが渋くなる。使っていて硬いと感じるとき、革が減ったわけではなく、この釣り合いが崩れているだけ、ということがほとんどです。
逆に言えば、置き場所を変えるだけで防げる劣化がかなりある、ということでもあります。高価なクリームを買う前に、置き場所を見直すほうが効きます。
この三つが同時にかかり続けるのが、夏の車内です。ですから、シーズンが終わったら車から降ろす、というのが最初の一歩になります。
| 置き場所 | 熱 | 紫外線 | 湿度の振れ | オフシーズンの適性 |
|---|---|---|---|---|
| ダッシュボードの上 | とても大きい | とても大きい | 大きい | 避けたい |
| ドアポケット | 大きい | 小さい | 大きい | 避けたい |
| グローブボックス内 | 中くらい | ほぼなし | 中くらい | 短期なら可 |
| トランク | 中くらい | ほぼなし | 大きい | 避けたい |
| 屋内の引き出し | 小さい | ほぼなし | 小さい | 向いている |
短期と長期で、置き場所の答えが変わる
ここで一つ、線を引いておきます。週末ごとに乗る時期の置き場所と、シーズンオフの置き場所は、別の問題です。毎週使うなら、多少条件の悪い場所でも構いません。取り出す頻度が高いほど、乾く機会も増えるからです。
基準は、およそ一か月です。次に使うのが一か月以内なら、グローブボックスの中でも大きな問題は起きにくい。一か月を超えるなら、車から降ろす。夏のあいだ乗らない、冬のあいだ乗らない、という乗り方をされている方は、その期間に入る前の一日だけ手を動かせば済む話です。二組を季節で使い分けているなら、仕舞う側だけ先にこの手順を通すことになります。二組を回す考え方そのものはグローブは2組を回すと長持ちする|1組を毎日使うより、結局は安くつく理由に書きました。
仕舞う前に、湿気を抜く時間をつくる
車から降ろしたら、すぐ袋に入れないでください。間に、乾かす時間を挟みます。
使い終わったグローブの内側には、必ず汗の湿気が残っています。手のひらは体の中でも汗をかきやすい場所で、しかも革は湿気を吸います。表面が乾いて見えても、内側はまだ湿っている、という状態がふつうです。この状態で密閉すると、湿気の行き場がなくなります。
やり方は簡単です。風通しのいい室内で、直射日光の当たらない場所に、二日ほど広げて置く。ドライヤーやストーブで急いで乾かすのは避けてください。表面だけが先に乾いて硬くなり、内側の湿気が残ります。低い温度で、時間をかける。これが革の乾かし方の原則です。
もうひとつ、置く前にやっておくと効くのが、表面の汚れを落とすことです。手のひら側には、ステアリングやシフトノブから移った皮脂と、細かいほこりが乗っています。これを載せたまま何か月も置くと、汚れが革に定着して落ちにくくなる。乾いた柔らかい布で、縫い目の方向に沿って一往復拭く。それだけで十分です。水を含ませる必要はありません。
汗をかいた後の手入れや、匂いが気になるときの対処は、洗うかどうかという話とセットになります。ドライビンググローブは洗えるのかで扱っていますので、シーズン終わりの一組が汗を吸っている場合は、そちらを先に読んでいただくと順番が整理できます。
丸めない・重ねない——指の形を殺さない置き方
乾いたら、置き方です。ここは三つのやってはいけないことを覚えるだけで済みます。
- 丸めない。握った形のまま丸めて輪ゴムで留める、という仕舞い方をすると、その折り目が固定されます。革は、長く曲がっていた場所に癖を残します。
- 重ねない。複数の組を積み上げると、下の組に荷重がかかり続けます。手の甲側の広い面に、上の組の縫い目の跡が残ることがあります。
- 挟まない。引き出しの中で、他の物とのあいだに押し込まれた状態が続くと、指の部分がつぶれます。
理想は、平らに、指を伸ばして、一組ずつ置くことです。指の間のシワを軽く伸ばしてから、手のひら側を下にして寝かせる。引き出しの底に一段だけ並べるのがいちばん確実です。
手縫いに近い作りの一組ほど、この置き方が効きます。G17 クラシック・ラム(ブラック/羊革/ハーフフィンガー)(¥7,800)は、ナックル部分をレザーで覆ったデザインで手を自然に保護する構成のハンドメイドのクラシックグローブです。素材は天然シープスキン(羊革)、仕様はハーフフィンガー、サイズはSmall・Medium・Largeの3展開。ナックル部分のように面で構成された箇所は、荷重がかかったまま置かれると跡が出やすいので、上に物を置かないことがそのまま手入れになります。
密閉袋がいい場合と、悪い場合
保管袋については、意見が割れるところです。結論から言うと、密閉していいのは、中身が完全に乾いていて、置き場所の湿度が高いときだけです。
密閉のいいところは、外からの湿気とほこりを遮れることです。梅雨時の押し入れのように、周囲の湿度が高い場所では、この効果が効きます。悪いところは、内側の湿気も閉じ込めることです。乾き切っていない状態で閉じると、袋の中で湿度が上がったまま何か月も過ぎ、革の表面に白っぽいものが出ることがあります。
迷ったときは、通気のある布の袋か、蓋のない箱を選んでください。前の章で二日かけて乾かしたなら、屋内の引き出しに布袋で置いておくだけで十分です。乾燥剤を一緒に入れるなら、革に直接触れない位置に置きます。
革の種類によって、この判断は少し変わります。G18 ヘリテージ・ディア(ブラック/鹿革/ハーフフィンガー/ハンドメイド)(¥7,800)は、使い込むほど深まるしなやかさと耐久性を兼ね備えた上質な鹿革を使ったハンドメイドのハーフフィンガーグローブで、サイズはSmall・Medium・Largeの3展開です。鹿革は変化がゆっくり進む革なので、保管中の状態変化も穏やかに出ます。逆に羊革は変化が早い革で、G19 クラシック・ラム(ブラウン/羊革/ハーフフィンガー/ハンドメイド)(¥7,800)のようなアンティーク感のあるクラシックブラウンの天然シープスキンは、保管の良し悪しが表情に出やすい。良い置き方をすれば、それもそのまま出ます。
置き場所そのものについても、一言だけ。屋内であっても、外壁に面した収納の中や、床に直接置いた箱の中は、季節によって湿度が上がります。腰から上の高さで、部屋の内側にある引き出し——それが、家の中でいちばん条件のいい場所であることが多いです。特別な設備は要りません。
次のシーズン、最初に触ったときの手触りで分かる
保管がうまくいったかどうかは、次に取り出した瞬間に分かります。判断は手触りだけで足ります。
| 取り出したときの状態 | 読み取れること | 次の一手 |
|---|---|---|
| しまったときと変わらず柔らかい | 保管は成功している | そのまま使い始める |
| 少しこわばるが、握ると戻る | 乾いただけ。問題はない | 手で数分もみほぐしてから使う |
| 硬く、曲げると乾いた音がする | 油分が抜けている | 使う前に専用のクリームを薄く |
| 表面に白っぽいものが浮いている | 湿気が閉じ込められていた | 乾いた布で払い、風を通す |
| 折り目が付いて戻らない | 丸めた状態で置かれていた | 平らに置き直し、時間をかけて戻す |
三行目の「乾いた音」が、いちばん分かりやすい目安です。新品の革は、曲げても音を立てません。乾いた紙のような音がしたら、油分が抜けている合図だと考えてください。
ここで大事なのは、硬くなったからといって即座に寿命というわけではないことです。クリームで戻る範囲であれば、まだ使えます。戻らない状態と、まだ使える状態の線引きは、シワや色抜けの読み方とセットで考えると分かりやすくなります。使い込んだグローブは、その人の手の形になるで、その線を引いてあります。ほかのモデルはグローブのカテゴリで一覧できます。
まとめ
革が傷むのは、走っているあいだではありません。使っていない時間の置き方で、次のシーズンの手触りが決まります。やることは多くありません。車から降ろす、乾かす、平らに置く。この三つです。
シーズンが終わったら、この順番で仕舞ってください。
- ドアポケットやコンソールから取り出し、車内に置きっぱなしにしない
- 風通しのいい室内で、直射日光を避けて二日ほど広げて乾かす
- ドライヤーやストーブで急いで乾かさない
- 指の間のシワを軽く伸ばし、手のひら側を下にして平らに置く
- 丸めない、重ねない、他の物とのあいだに挟まない
- 密閉袋は、中身が完全に乾いていて周囲の湿度が高いときだけ使う
- 迷ったら通気のある布袋か、蓋のない箱にする
- 乾燥剤を使うなら、革に直接触れない位置に置く
- 次に取り出したとき、曲げて音が鳴るかどうかを最初に確かめる
半年後の自分に、いい状態の一組を渡すつもりで置く。手袋の手入れとしては、それがいちばん効きます。
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