夏の駐車後、ステアリングが熱くて握れない|表面の温まり方と、日除けの置き方

買い物を済ませて駐車場へ戻る。ドアを開けた瞬間に、こもった熱がどっと出てくる。座って、ステアリングに手をかけようとして——指先が触れた瞬間に、思わず引っ込める。仕方がないので指の腹だけをちょんちょんと当てながら、エアコンが効いてくるまでの数分をしのぐ。夏の駐車場では、たいてい誰もがこの動作をしています。
不思議なもので、冬の「ステアリングが冷たい」という話はよく語られるのに、夏の熱さは、なぜかみんな黙って我慢しています。冷たさは我慢すれば数分で温まりますが、熱さは我慢しても勝手には冷めません。しかも、握れないということは操作の余裕がないということでもあります。実用上、こちらのほうが厄介だと私たちは思っています。
この記事では、駐車中のステアリングがなぜあれほど熱くなるのかを、色と表面の状態という2つの切り口から整理します。そのうえで、素材ごとに手が感じる差がどう出るのか、サンシェードをどう置けば効くのか、走り出しの数分をどうしのぐのかを順にお話しします。特別な装備を買い足さなくても、置き方と使い方を変えるだけでできることが、思っているよりたくさんあります。
冬の冷たさは語られるのに、夏の熱さは我慢されている
まず、なぜ冬の話ばかりが語られるのかを考えてみます。冬にステアリングが冷たいとき、手は「冷たい」と感じますが、握り続けることはできます。握っていれば体温で温まり、数分で気にならなくなる。つまり我慢すれば解決に向かう問題です。
夏は逆です。触れない温度になっているとき、握っても熱は下がりません。むしろ手のほうが温まってしまう。運転しなければならないので握るしかないのですが、指先だけで支えるような持ち方になり、いざというときの操作が遅れます。走り出しの数分は、駐車場から公道へ出るという、周囲への注意がいちばん必要な時間帯でもあります。ここで握りが甘いのは、単なる不快さの話ではありません。
それでも夏の対策が語られないのは、対策が「日陰に停める」しかないと思われているからでしょう。実際には、もう少し選べる余地があります。冬の冷たさへの対処は冬の冷たいリムとグローブにまとめていますが、夏には夏の考え方があります。
日射で温まるのは、色と表面の状態で決まる
駐車中のステアリングが温まる仕組みは、大きく2つです。1つは窓から差し込む日射が直接当たること。もう1つは、室内の空気そのものが温まり、それに包まれること。前者のほうが速く、そして激しく効きます。
日射が当たったときに温度がどこまで上がるかを決めるのが、光をどれだけ吸うかです。黒い面は当たった光のほとんどを吸って熱に変えます。白や明るい色は多くを反射して返します。車のインテリアは黒が基本なので、この点では最初から不利な条件に置かれていると言えます。
もうひとつの要素が表面の状態です。ここが少し意外なところで、艶のある面と艶消しの面では、光の返し方が違います。光沢面は当たった光を鏡のように一方向へ跳ね返すので、角度によっては大きく反射します。艶消し面は細かい凹凸で光を散らすため、まぶしさは抑えられますが、そのぶん吸収される割合は増える方向に働きます。眩しさ対策として艶消しを選ぶ考え方は映り込みを抑えるなら、グロスかマットかに書きましたが、熱という切り口では話が単純に反転しないのが面白いところです。
そしてもう1つ、握ったときの感じ方を左右するのが熱伝導です。同じ温度でも、熱を素早く手に渡す素材ほど「熱い」と感じます。冬に金属が冷たく感じるのと同じ理屈で、夏はそれが逆向きに働きます。触った瞬間の印象は、温度そのものより、この熱の渡り方で決まっていると言ってもいいくらいです。
革・アルカンターラ・カーボンの、手が感じる差
素材ごとの傾向を整理します。ここでの「熱く感じやすい」は、実際の温度ではなく、触れた瞬間に手がどう感じるかの話です。
| リムの素材 | 手に熱を渡す速さ | 触れた瞬間の印象 | 夏の扱いやすさ |
|---|---|---|---|
| 本革(スムース) | 中くらい | じわりと熱い。汗で滑りやすくなる | 拭き取りが要る |
| スエード調・起毛素材 | 遅い | 比較的おだやか。ただし熱はこもる | 汗を吸うぶん扱いやすい |
| 樹脂・ウレタン | 遅め | おだやかだが、長く日射を受けると芯まで温まる | 冷めるのも遅い |
| カーボン(樹脂で固めた複合材) | 中くらい | 面が硬いぶん、当たった一点にはっきり感じる | 拭けばすぐ元に戻る |
| 金属(スポークやセンター部) | 速い | いちばんはっきり熱い | 直接触れない持ち方で回避 |
この表で注目していただきたいのは、いちばん右の列です。熱く感じやすい素材が、必ずしも扱いにくいとは限りません。熱を速く渡す素材は、裏を返せば速く冷める素材でもあるからです。エアコンが効きはじめれば、金属やカーボンの面は数分で落ち着きます。逆に、おだやかに感じる樹脂や起毛素材は、いったん芯まで温まると冷めるのに時間がかかります。夏の熱さに限らず、素材そのものの性格を並べて比べたものはステアリングホイールの素材を徹底比較|本革・アルカンターラ・カーボンの違いと選び方にあります。
当店のW03 Dマン(¥48,000・320mm・マットブラック・ドライカーボン・D型/フラットタイプ・重量500g・PCD 70mm)は、艶消しのカーボン面を持つモデルです。映り込みが少なく、フロントガラスへの反射が気になりにくい仕上げですが、夏の日射という切り口では、艶のある面より光を吸う方向に働きます。ただし面が硬く、汗を吸わないので、乗り込んで拭けばすぐ元の触感に戻る。長所と短所が、素材の同じ性質から出ているわけです。
なお、真夏の炎天下に長時間置いた車は、ステアリングに限らず室内のあらゆる面が高温になります。無理に握らず、まずは窓を開けて空気を入れ替え、面の温度が下がってから運転を始めてください。触れられないほどの状態で操作を始めるのは、どの素材であっても避けるべきです。
サンシェードは「面」ではなく「角度」で効く
もっとも効く対策は、日射をステアリングに当てないことです。ここで多くの方が見落としているのが、サンシェードは置く角度で効き方が変わるという点です。
フロントガラスに立てかけるタイプのシェードは、ガラス面に対して斜めに置かれます。このとき、太陽の高さによっては、シェードとダッシュボードのあいだにできた隙間から光が入り込み、ちょうどステアリングのあたりに帯状に当たることがあります。「シェードを付けているのに熱い」という声の多くは、これが原因です。
- 下端をダッシュボードにしっかり接地させる。浮いていると、そこから入った光が室内で反射して回り込みます
- サンバイザーで押さえて上端を密着させる。上が離れているとガラスとの隙間から光が入ります
- 日が高い時間帯は、リアやサイドからの回り込みも考える。フロントだけを塞いでも、横から入る光がリムに当たっていることがあります
- 停める向きを選ぶ。駐車場に空きがあるなら、フロントガラスが太陽と反対を向く向きに停めるだけで、当たる面積が変わります
もうひとつ、そもそもステアリングに布を1枚かけておくという古典的な方法があります。タオルでも構いません。見た目は無粋ですが、直射が当たらないという一点においては確実に効きます。降りるときに10秒かけるかどうかの話です。
走り出しの数分をしのぐ、グローブという選択
それでも、乗り込んですぐ出発しなければならない場面はあります。そのときに現実的なのが、グローブを使うことです。
ドライビンググローブというと、走行会や旧車の趣味の道具という印象があるかもしれません。ですが機能から見れば、手とリムのあいだに一枚挟むための道具です。熱いリムに直接触れずに済み、しかも汗で滑ることもなくなる。夏こそ理にかなった使い方だと思っています。
問題は、夏に革の手袋をすると手が蒸れることです。そこで当店では、通気を確保したモデルを用意しています。G04 ドライビング・メッシュ(ブラック/メッシュ素材/ハーフフィンガー)(¥7,800)は、甲部にメッシュ素材、掌部に天然シープスキン(羊革)を組み合わせたサマーグローブです。指先が出るハーフフィンガー仕様なので、スマートフォンや細かいスイッチの操作を妨げません。サイズはXS・S・M・Lの4展開で、手のひらのいちばん広い部分(親指を除く)を一周した「手囲い」で選びます。やや大きめの作りなので、ぴったりしたフィット感がお好みなら、ワンサイズ下という選び方もできます。
掌側が羊革であることには意味があります。熱いリムに触れる面が布ではなく革であること、そして汗をかいた手でもグリップが落ちにくいこと。この2つは夏の運転で直接効いてきます。ラインナップ全体はグローブのコレクションからご覧ください。
置き場所を変えるだけで、乗り込んだときの一手間が減る
最後に、もっとも効いてもっとも安上がりな方法の話をします。停める場所と向きを変えることです。
立体駐車場の上階と下階、屋根のある区画とない区画、建物の影が伸びる側と伸びない側。同じ料金で、同じ距離のところに、条件の違う枠があることは珍しくありません。買い物のあいだの数十分でも、直射が当たり続けたかどうかで、戻ってきたときの車内はまったく違います。
向きも同じです。午後に戻ってくることが分かっているなら、西日がフロントガラスに正対しない向きに停める。それだけで、ステアリングに当たる直射の量が変わります。特別な道具は要らず、停めるときに数秒考えるだけです。
そのうえで習慣にしておくとよいのが、次の3つです。
- 降りるときに、ステアリングへ布かシェードを一枚かける
- 戻ってきたら、まず窓を開けて空気を入れ替える。熱い空気を追い出すほうが先
- グローブボックスに乾いた布を1枚。汗を拭き取れば、リムの表面も長持ちします
ちなみに、冬の冷たさに対する考え方も、原理としては同じ話の裏返しです。素材ごとの熱の渡り方という一本の軸で見ると、シフトノブの冷たさも同じ枠で説明できます。興味のある方は冬の朝、シフトノブが冷たいもあわせてどうぞ。
まとめ:夏の駐車後にやること
熱くて握れないという状態は、我慢ではなく段取りで減らせます。次の順番で考えてみてください。
- 触れないほど熱いときは、無理に握らない。窓を開けて空気を入れ替え、面の温度が下がってから運転を始める
- 温まり方を決めるのは、色と表面の状態。艶消しは眩しさに効くが、熱の吸収では別の顔を持つ
- 触れた瞬間の熱さは、温度そのものより熱の渡り方で決まる。速く熱く感じる素材は、速く冷める素材でもある
- サンシェードは面積ではなく密着と角度。下端の接地と上端の押さえで効き方が変わる
- ステアリングに布を一枚かける。降りるときの10秒でできる、いちばん確実な対策
- 走り出しの数分は、通気のあるグローブで挟む。汗による滑りも同時に減らせる
- 停める向きと区画を選ぶ。直射が当たらない条件を選べる日は、それがいちばん効く
ステアリングは、走行中ずっと手が触れ続ける唯一の部品です。その最初のひと握りが不快だと、その日の運転の印象まで変わってしまう。夏の数分をどう扱うかは、ささやかですが、車と付き合ううえで案外効いてくる部分だと思っています。
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